米公立校に増える国際バカロレアの導入 (WSJ日本版から引用)

日本の教育は、自由化で自然淘汰され良くなるのだろうか。

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世界各国を飛び回る外交官の子弟のために本来作成された教育カリキュラムが、幼稚園から高校に至る米国の公立学校に急速に導入されている。これにより、貧困層の多い都心部の学校でさえも、試験結果や学習レディネス(学習者にとって学ぶ準備が整った状態)が向上している。

 テキサス州ヒューストンやイリノイ州シカゴ、それにフロリダ州タンパや他の都市では国際バカロレア(IB)のプログラムが、学業成績の芳しくない学校の改良手段として、またともすれば私立学校へ流れがちな中間所得者層の世帯を引きつける手段として、もしくはより多くの選択肢を提供する手段として導入されている。

 ヒューストン独立学区でIBプログラムを推進するサミュエル・サラビア氏は「これはエリートのためのプログラムではない」と指摘する。同学区では10校にIBプログラムが導入されており、そのなかには児童・生徒の過半数給食費の免除もしくは減額を受けている2校も含まれる。さらに低所得者層の子どもたちが多く通う5校もIBプログラムへの移行過程にある。運営するのは非営利の国際バカロレア機構だ。
IBプログラムはもともと外交官や海外赴任の多い企業幹部らの子どもたちのために、1960年代にスイスのジュネーブで始まった2年間の高校卒業資格取得のためのカリキュラムだ。後には、小中学校のプログラムとしても拡大された。

 今日、米国にはIBプログラムの導入校が1651校あり、そのうち公立校は1493校を数える。03年には503校だった。プログラムが導入されている学校の約90%が公立校で、そのほとんどが外交官の子どもたちではなく、米国内の児童・生徒を対象にしている。

 当局はIBプログラムの批判的思考法に重点を置いた教育法を大いに宣伝している。講義方式で教諭が知識を与える伝統的なモデルと違い、IBプログラムは「国際的な関心」に基づいた個人や団体のプロジェクトに重点を置いている。児童・生徒は第2言語の履修を求められる。

 このカリキュラムを教える学校はIBの方針に準拠しているかどうかを確認するため、IB機構から5年ごとに検査を受ける。

 ヒューストン独立学区にあるノースライン小学校のブライアン・ドイル校長は「われわれに活を入れるような何かが必要だと感じていた」と話す。この小学校では児童の97%が給食費の免除もしくは減額を受けており、3分の2が英語を学んでいる。

 この小学校は11年に、5年生の科学の試験で約84%が州の基準に達した。08年の65%を上回った。

 米教育当局の一部はIBをカレッジボード(大学入試委員会)のアドバンスト・プレースメント(AP)プログラムになぞらえている。APプログラムは特別な授業と試験で構成されるもので、大学水準の単位が得られるプログラムだ。ただ、APの授業は一般的に上級の学年に限定されている。

 シカゴのエマニュエル市長は昨年、同市は今後数年間に低・中間所得者層が多く住む住宅区で、IBプログラムを導入する高校を11校と小学校を6校増やすと発表した。実現すれば、現行より2倍近くの学校でIBプログラムが実施されることになる。

 エマニュエル市長は12年にシカゴ大学で学校研究団が実施した調査に言及し、IBプログラムを導入している、学区内のある高校の03年から07年の卒業生は伝統的なプログラムで指導する高校の卒業生より4年制の大学に進学する数が40%多かったことを指摘した。この報告は12の高校でのIBプログラムの影響を検証した。

 IBプログラムを支援する国際バカロレア学校フロリダ連盟で責任者を務めるラルフ・クライン氏によると、フロリダ州では1987年に5校だったIBプログラムの導入校が131校に増えた。

 ただ、保護者の中からはIBプログラムを理論的すぎると懸念する声も聞かれる。2人の娘をIBプログラムの学校へ通わせるテキサス州ウェーコの保護観察官、ケリー・マンさんは「(英単語のつづりの正確さを競う)スペリングビーや歴史のリポートの代わりに、約6週間を貧困問題やホワイトタイガーの救済に関する授業に費やすのを見るのはもどかしい」と話す。学校全体がIBプログラムへ移行したため、伝統的な授業は提供されない。

 学校は通常、このプログラムの導入準備のために15万ドル(約1420万円)前後の負担を負う。そのなかには実験室や図書室の拡張も含まれる。また学校はIB機構に年間約1万ドルの手数料と、高校2年と3年で実施される試験料として生徒1人当たり700ドル、さらに教師の訓練費用を支払わなければならない。

 IBプログラムを導入している学区は通常、これらの費用を一般会計と補助金、さらに寄付でまかなっている。

 インディアナ州インディアナポリス在住で3人の息子を持つPTA会長のステイシー・ローザーさんは、学区内の11校がIBプログラムへの移行を始めてから指導の質が向上したと指摘する。

 経営コンサルタントのローザーさんは「私たちの学校システムに投じられたIBマネーは教育過程に10倍になって戻ってきたと感じている」と話す。ローザーさんの小学5年生の息子は1年生のときから中国語を勉強しているという。
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