中国、TPPへの態度を軟化 米中首脳会談を前に (WSJ日本版から引用)

既存の国連などではなく、新たな枠組みで次の世界が回り出すのかもしれない。

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北京】中国は米国主導の環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加する可能性を示唆した。中国の政府関係者はこれまでTPPについて慎重な態度を示してきたが、来週の米中首脳会談を前に態度を軟化させる可能性を示した格好だ。

 TPP交渉は参加国間の貿易・投資の障壁を除去することを目指しており、現在、交渉には米国、日本など12カ国が参加している。中国では一部で、TPPは中国の経済的な影響力の拡大を阻止することも狙っているとの批判の声が上がっている。
中国商務省の沈丹陽報道官は30日 、同省のウェブサイト上に声明を掲載し、中国が「慎重な研究および平等と相互利益の原則に基づいて」交渉への参加の是非と可能性を分析すると述べた。

 沈報道官はまた、政府が他の省庁からも意見を求めていることも明らかにした。

 さらに、外務省の洪磊報道官は31日、定例記者会見で「TPPやアジア太平洋地域の経済統合や共通の繁栄を促進するその他の構想について、中国は開放的な姿勢を取っている」と述べた。

 洪報道官は中国政府がTPPの議論を注視しており、「TPP交渉が透明性を高めることができる」ように願っていると述べた。

 結果として、どの程度の政策変更が行われるかは今のところは不明だが、中国がTPP交渉に参加するにはいくつもの大きな障害に直面することが予想される。TPP交渉では、国有企業や為替取引などに関する規則が策定される可能性が高いが、この2つは中国独特の国家主導の資本主義には欠かせないものだ。

 しかし、中国側の発言のトーンが変わったことは明らかだ。中国政府高官はこれまでTPPについて慎重な発言を繰り返しており、国営メディアはさらに批判的だった。今年2月には中国共産党の機関紙、人民日報が「米国が日本をTPPに取り込もうとしているのはアジア太平洋地域における中国の影響力を抑制するためだ」との論評を掲載した。

 中国の報道官は米中首脳会談を翌週に控えたタイミングでTPPについて発言した。中国の習近平国家主席は既に北京を発っており、トリニダード・トバゴコスタリカ、メキシコを訪問したあとに米国入りし、カリフォルニア州オバマ米大統領で会談する。

 中国は米中首脳会談を前に、米国の懸念を和らげるような手を他にも打つ可能性がある。最近の為替市場では、中国が1日の取引において人民元の一層の柔軟性を認めるとの期待感もあって元が上昇している。

 HSBCエコノミスト、馬小平氏は発言のトーンが変化したのはジェスチャーとしながら、過度な期待の高まりにくぎを刺した。馬氏は「中国や世界の貿易に今すぐ大きな影響を与えることはないだろう。むしろ、中国は開かれているということを示すジェスチャーに近い」と述べた。

 一方、シティグループエコノミスト、Ding Shuang氏はTPPに対する中国の姿勢は実際に変化していると述べた。Ding氏は「政府のコメントは、どの国が交渉を主導しようと、中国はいかなる国際貿易交渉も見逃すべきではないとの見解を表するものだ」と述べ、中国がTPPについて発言権を手に入れたいのであれば、規則の策定に参加する必要があるとの見方が広がっていると指摘した。

 Ding氏は「まだこれからの話だが、TPPの敷居は高く、中国の実質的な参加ははまだずっと先の話だ」と述べた。

 TPP交渉に参加しているのは日本、米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ベトナム、マレーシア、シンガポールブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド。参加各国は年末までの交渉妥結を目指している。日本が交渉に参加したことで、TPPは世界の経済生産高の40%近くをカバーする協定となる。

 中国の習主席は「中国夢(チャイナドリーム)」という復興を目指す取組みを積極的に支持している。専門家によると、「中国夢」には中国がアジア太平洋地域で軍事的、経済的に優れた役割を果たすことが含まれている。
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