安倍首相、日銀次期総裁に黒田アジア開銀総裁起用へ (WSJ日本版から引用)

為替の方向性は置いておくとして、日銀が株式等の買取まで推し進めれば、バブルにはなるのだろう。

引用開始
【東京】安倍晋三首相は、日本銀行次期総裁に元財務官の黒田東彦アジア開発銀行総裁(68)を指名する見通し。2人の政府当局者が25日明らかにした。
両当局者によると、安倍氏は3月19日に退任する白川方明総裁の後任を黒田氏に決めた。週央に国会に提示される見通しという。ある野党議員も、安倍氏による黒田氏指名の意向を聞いたと述べた。

 首相官邸の報道官はコメントしない方針を示した。黒田氏からのコメントは得られていない。

 黒田氏指名には、衆参両院の承認が必要だ。政府は衆院では過半数を得ることが明らかだが、参院で承認を得るには野党少なくとも1党の支持が必要となる。民主党のあるベテラン議員は、政府が正式に提案した場合に黒田氏指名を支持する公算が大きいと語った。
安倍氏の選択や、それが2%のインフレ目標に向けた日銀の措置に及ぼす影響について金融市場は数週間にわたり探っていた。日銀による追加緩和に前向きな元財務官の黒田氏の指名でこれが終息する。

 黒田氏は白川総裁の後任として有力視されていた。国際金融市場に精通した当局者や学者の「通貨マフィア」と渡り合ってきた黒田氏は、国際的な経験の面で際立っていた。

 黒田氏は2000年代初めには、4年にわたって財務省の為替政策を担当し、特に円相場の押し下げに努めた。安倍氏は昨年12月の首相就任に際し、金融の蛇口を開く人物、つまり、円の供給を大幅に増やし、その価値を押し下げる人物を日銀新総裁に指名すると明言していた。

  円は今年、ドルやユーロ、その他の主要通貨に対して大幅に下落している。黒田氏が選ばれたとの24日夜の報道後はさらに下げた。25日朝のアジア市場では、ドルが94円77銭と、先週末22日のニューヨーク市場でつけた93円41銭から急伸。10年5月以来の最高値まで上昇した。また、日経平均も黒田氏内定のニュースに続伸し、午前の取引で200円以上、率にして2%超上昇し、08年9月以来の高水準をつけた。

 黒田氏は過去数週間のインタビューで、新総裁に就任した場合に日銀による市中銀行からの国債などの資産買い入れをてこ入れし、多様化する方針を示していた。

 こうした資産買い入れは、通貨供給と景気てこ入れを目指す日銀の主な手段だ。買い入れにより、市中銀行が企業や家計への融資に回せる資金が増えるという考えからきている。

 黒田氏は2月半ばのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「金融緩和の余地がかなりある」と述べ、日銀は国債にとどまらず、社債、さらには株まで買い入れの対象にできるとの考えを示していた。 

 安倍氏は日銀副総裁にエコノミスト学習院大学岩田規久男教授(70)を指名すると決めた。同氏は25日朝、就任を要請されていることを記者団に明かした。もう1人の副総裁について 国内メディアは、安倍氏が日銀の生え抜き数人の候補者リストに焦点を置いていると伝えた。同氏が改革を明言しながらなおも支持を取り付ける必要のある、日銀の官僚主義に対する譲歩とみられている。

 黒田氏と2人の副総裁候補が国会で承認されれば、安倍氏は日銀に大きな影響力を持つことになる。政策委員会を構成する委員9人のうち3人が、同氏に選ばれることになるためだ。

 もちろん、そうなったとしても、白川総裁の政策に大筋で忠実だった政策委員会で、この3人が賛否両論ある立場を押し通せるとは限らない。

 また、黒田氏が自身の政策を完全に導入できたとしても、構造改革なしに日本経済の修正に成功できる保証はない。日銀の抜本的な変革を提唱しているシカゴ大学のアニル・カシャップ教授は「日本を苦しめていることの大半は、金融政策では修正できない」と述べた。「デフレ終息は良いことだが、日本を前進させるには、その他多くの改革が必要だ」という。

 黒田氏はかねて日銀を公に批判してきた。財務官だった2002年には全米経済研究所での講演で、日銀がデフレ対策で追加的な措置を講じないなら、財務省が自ら措置を見つけるべきだと訴えている。

 財務省を退官した後、アジア開発銀行総裁に就任する前に一橋大学大学院経済学研究科で教べんをとっているときには、「財政金融政策の成功と失敗―激動する日本経済」を執筆した。その中で、80年代終盤の資産バブルをあおった上、2000年初頭の金融引き締めが急激すぎたとして、80年代初頭から四半世紀の日銀を批判している。
引用終了