イタリア:醜聞続きベルルスコーニ氏、まさかの復活?(毎日jpから引用)

イタリア劇場はどうなる。

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醜聞続きのイタリアのシルビオベルルスコーニ前首相(76)がまさかの復活を遂げつつある。実質的に経営するメディア企業の脱税疑惑で昨秋に1審有罪判決を受けたが、総選挙(24〜25日)に向けて、自ら率いる中道右派政党・自由国民の支持率は右肩上がりだ。したたかに政界生き残りを図っている。【ローマ福島良典】

 「生涯最後の大勝負を戦いたい」。今月初め、ベルルスコーニ氏はイタリア北部ミラノで支持者を前に宣言した。債務危機の中、スキャンダルにまみれ、首相の座から追われたのは一昨年11月。1年後政治の表舞台に復帰するや、自由国民の不振に歯止めをかけ、右派地域政党北部同盟」と組んで、支持率首位の中道左派民主党を猛追。8日の現地紙によると、支持率は数ポイント差にまで迫っている。

 打ち出しているのは国民に不満がくすぶる財政緊縮策の軌道修正や、実現性が疑わしい大型減税など大衆受けする政策だ。若い頃に掃除機の販売で学費を稼ぎ、実業家として成功しただけに売り込みには長じている。「エンジンなしの車も売れるセールスマン」との評も。側近は「企業家と政治家の経験を併せ持つ指導者は他にいない。分かりやすい言葉で国民が聞きたいことを語る」と持ち上げる。

 不安定な政治状況が日本と似ていると言われるイタリア。ANSA通信の東京特派員を長年務めたロベルト・マッジ氏(66)は「メディアの使い方や演説のうまさで部分的に似ているのは小泉純一郎元首相」と言う。だが「ベルルスコーニ氏の本当の強さはメディアのオーナーであることだ」と指摘する。

 ベルルスコーニ氏は、テレビ3局を傘下に収めるメディアセットを創業し、国営テレビにも影響力を保持する「メディアの帝王」だ。メディアセットが絡む脱税疑惑で昨年10月に禁錮4年の1審有罪判決(恩赦法に基づき禁錮1年に減刑)を受けたが、系列テレビ局に出演して判事批判を繰り広げて反撃した。

 私生活でも、少女買春疑惑、巨額慰謝料の支払いを命じられた妻との離婚協議、49歳年下の女性との婚約と波乱続きだ。だが、ローマ郊外で開かれた集会で支持者に聞くと「彼は国のために正しいことをしてきた。私生活に興味はない」(65歳の配管工の男性)。72歳の女性は「イタリアを救えるのは彼だけ。しかもハンサムよ」と付け加えた。
マッジ氏は「普通、政治家が有罪判決を受ければおしまいだが、イタリアにはベルルスコーニ氏を受け入れる風土がある。公益よりも自分の利益が一番大事で、彼はそれを守るために政治家になったと考える人が多い。彼はイタリア人の代表なのだ」と分析する。

 「ベルルスコーニ氏の狙いは、たとえ選挙で勝てなくても、強い野党になることだ」。民主党のマルコ・カウジ前下院議員が解説する。総選挙は、同等の権限を持つ上下両院の同日選。勢力伯仲の上院で民主党過半数割れに追い込むなどして「テレビ局規制など自分の利益に反する構造改革法案成立を阻止したいのだ」という。

 ただ、旧メディアであるテレビに依存するベルルスコーニ氏は安泰とはいえない。インターネットを武器とするコメディアン、ベッペ・グリッロ氏(64)の政治団体五つ星運動」が台頭しているためだ。参謀役のジャンロベルト・カサレッジオ氏は「『新メディアの勝ち』で勝負はついている」と断言する。

 共に「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」と呼ばれる2人だが、世論調査では18〜23歳の30.4%が「五つ星運動」を支持し、自由国民は12.4%。ベルルスコーニ氏の生き残りを懸けた政治劇場は「終わりの始まり」を迎えている。
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