日銀は現状維持へ、4月以降の利下げの見方強まる−新体制前倒しで (Bloomberg.co.jpから引用)

しばらくすると調整持合いの季節となるのだろうか。

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 2月12日(ブルームバーグ):日本銀行が13、14日に開く金融政策決定会合は、現状維持が見込まれている。白川方明総裁が4月の任期満了前の辞任を表明したことで、新体制下の金融政策をめぐる思惑が一段と強まっており、「0−0.1%」の政策金利や0.1%の付利の引き下げを予想する向きが増えている。

ブルームバーグ・ニュースが有力日銀ウオッチャー13人を対象とした調査では、全員が現状維持を予想した。白川総裁は5日夜、4月8日の任期満了を待たず、副総裁2人の任期に合わせ3月19日に辞任する意向を安倍晋三首相に伝えた。この結果、4月3、4日の金融政策決定会合は新しい正副総裁の下で迎えることになる。

日銀当座預金の超過準備に適用される付利をめぐっては、12月の決定会合で石田浩二審議委員が「0%」への引き下げを提案したが、反対多数で否決された。今回の調査では、13人中5人が4月以降の政策金利ないし付利の引き下げを予想。一段の金利引き下げの思惑から、金融機関が長めの資金調達を控えており、日銀の0.1%の固定金利オペでは、入札額が提示額を下回る札割れが頻発している。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは今会合については、前回会合でオープンエンド型の資産買い入れの導入が決まったばかりであることに加え、国内景気持ち直しの兆しが強まっていることから、現状維持を予想。「金融市場の関心は既に新体制下での追加緩和措置に移っているとみられ、今回政策据え置きの場合でも、金融市場への影響は限定的だろう」という。

新体制下の政策オプション

SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジストは新体制下で予想される政策について「白川総裁が1月会合で決定したオープンエンド方式において、14年以降からの開始を前倒しして実施、毎月のフロー金額も長期国債であれば2兆円からの増額だろう」とみる。

その上で「現状の包括緩和策を抜本的に見直すのであれば、まずは札割れが続く固定金利オペを段階的に減額して短期国債に振り替え、次に1−3年の長期国債の買い入れで、資産買い入れ等基金と輪番オペとの区分する意味合いがユーザー側にはないこともあり、銀行券ルールとの関係を整理しつつ統合を試みる」と指摘。「その作業を終えた後、対象国債の年限長期化や増額を考えていくべきだろう」という。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「4月26日会合でオープンエンド資産買い入れ実施の早期化と増額、付利の0.05%への引き下げ」を予想。白川総裁の早期辞任を受けて、これらが「4月4日に前倒しされる可能性もある」とみる。クレディ・スイス証券白川浩道チーフエコノミストは「基金の購入国債の対象年限延長と輪番オペ増額、付利と政策金利の0.05%引き下げ」を予想する。

付利の完全撤廃には懐疑的

もっとも、付利の完全な撤廃を予想する向きは少ない。東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは「基金を中心とした金融緩和策と下限金利撤廃の両立は基本的に考えられない」と指摘。白川氏も「付利の撤廃は基金の残高積み上げに支障が出る可能性があり、実施されない」と予想する。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「付利撤廃の可能性は排除できないが、それがオペレーション上のハードルを伴っていることも事実だ」と指摘。「基金の積み上げが技術的に困難になって、『量のイリュージョン(幻想)』が使えなくなるため、新総裁は基本的にはより長めの国債の購入を増加させていくだろう」とみる。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「フォワード・ガイダンス(時間軸)の強化が新総裁の下でのキーワードになる」と指摘。「最終的には、宮尾龍蔵委員が1月会合で提案した『消費者物価の前年比上昇率2%が見通せるようになるまで(ゼロ金利を)継続する』といったコミットメントに書き換えられる」とみる。

1年後には「白川総裁化」も

一時盛り上がった外債購入論は沈静化している。村嶋氏は「円ドル相場が1ドル=80円を下回っている状況では一定の意味のある議論だったとみられるが、既に円高の是正が進んだため、その現実的な可能性は低下した」と指摘。「むしろ、実行すれば海外当局者の反発を通じて、為替市場に無用なボラティリティー(変動)をもたらすリスクがあるだろう」という。

加藤氏は「新総裁は当初は白川現総裁よりもアグレッシブなスタンスを見せると思われる。しかし、日銀の資産が膨張しても、2%インフレに必要な『賃金上昇と物価上昇のスパイラル』はなかなか起きないことに気付く一方で、将来の出口政策のリスク、マネタイゼーションのリスクを意識せざるを得なくなり、就任から1年程度経過すると、意外に白川総裁の姿勢と似てくる可能性がある」とみている。

============================================================= ◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)【2015年7−9月以降】BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト信州大学の真壁昭夫教授【2015年10−12月以降】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト【2016年以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト、SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト、クレディスイス証券の白川浩道チーフエコノミスト野村証券の松沢中チーフストラテジスト、シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト、バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジスト=============================================================無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

   13 13 13 13 14 14 14 14
           3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末 12末

                                                                                                                        • -

調査機関 13 13 13 13 13 13 13 13
中央値 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
最高 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
最低 0.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

                                                                                                                        • -

三菱UFJ・MS 石井   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
SMBC日興証 岩下  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野 0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
第一生命経研 熊野 0.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
BNPパリバ証 河野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東海東京証券 佐野   0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
クレディS証 白川 0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
信州大 真壁 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
野村証 松沢 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
シティG証 村嶋 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズ証 森田  0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05

  (注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は政策金利「0.0−0.1%」の現状維持。アンケート回答期限は8日午前8時。「日銀サーベイ金利予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを12日朝に送信しました。ブルームバーグでは、回答者を拡大したサーベイも実施しています。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/12 06:00 JST
引用終了