コラム:IMFは緊縮策の弊害回避を=サマーズ氏(REUTERSから引用)

発展途上国には、厳しい緊縮策を今まで押しつけておきながら、自分たちがその対象になると、ルールを変えることを躊躇しない。ある意味国益を追求しているのだろう。日本の官僚は、イスラエル華僑が持った権力を簒奪し君臨した藤原流を引き継いで世界を泳いでいけるのだろうか。

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ローレンス・H・サマーズ

[14日 ロイター] 先週東京で開催された国際通貨基金IMF)・世銀年次総会前に世界経済が苦境にあえいでいたとすれば、現在の世界経済が平穏に推移しているとは考えにくい。

実際、IMF・世銀総会は、多数の当局者が東京を訪問したことで日本に若干の景気刺激効果を与えただけで、それ以外の成果を見いだすことは難しい。

米国は依然として「財政の崖」から(谷底を)覗き込んでおり、欧州は危機を食い止めようともがいているものの成長戦略を構築できずにいる。景気低迷から抜け出せない日本はわずかでも成長できれば満足している状態だ。

一方、BRICS諸国はどの国も満足できる状態にはない。短期的には金融の不均衡が成長を阻害しているほか、長期的には根深い腐敗や人口動態に関する問題が成長見通しに影を落としている。

先進国の大半では、最初は金融だけの問題だったことが深刻な構造問題に発展しつつある。欧米経済が1990年から2007年までの平均的な成長ペースを維持していたとすれば、現在の国内総生産(GDP)は実際を10―15%、2015年までには現実的な予測を15%以上上回る水準に達していたに違いない。

もっとも、2007年には世界のGDPが金融バブルをもたらしたのと同じ要因で嵩上げされていたため、この計算はミスリーディングな面がある。だが、たとえ2007年のGDPが5%程度意図的に押し上げられていたとしても、米国と欧州連合(EU)のGDPは達成できるはずだった水準を依然として1兆ドル程度下回っている。そのことは、平均的な米国の1世帯当たり1万2000ドルの生産が失われたことを意味する。

そう考えれば、経済に関する国際的な協調プロセスは失敗だったと言わざるを得ない。そのことは、世界のリーダーが失敗を犯したことを意味し、世界的な経済アーキテクチャーの改革を求める声が高まるだろう。
それはある意味で正しい。世界の大半の国々では、政治的な制約要因が必要な行動を妨げている。なぜなら、どの国でも国内要因よりも世界的に必要なプロセスが重視されることはないためだ。

米国の政治は大統領選や議会選挙を控えて機能不全に陥っている。EUは結論を下せず、米議会が効率的に結論を出す組織のモデルに見えることすらある。ロシアや中国では正当性を欠く権威主義的なリーダーが経済改革を進められずにいる。民主主義を標榜するインドやブラジルでも同じことだ。

政治的な機能不全や国際的な協調プロセスに対する懸念は間違いなく的を射ている。だが、どの国でも政治に期待できる最大のことは、重大な問題に理性的に対応することだ。重大な問題の解決策に関するコンセンサスがなければ、政治に対して持続可能な方法で強力な行動を期待することは難しい。残念ながら、特に先進国における現在の経済的困難に対処する上では、それがまさしく当てはまる。

短期的には成長の促進や雇用拡大を重視し、長期的には債務を抑制する必要があることについては誰でも見解が一致しているが、その方法をめぐっては各国内、および国ごとのどちらの面でも、見解に大きな隔たりがある。

「オーソドックスな見解」は、公的および民間セクターによる過度の借り入れが現在の問題を招いたと考え、長期的に債務の増大を抑制する必要性を強調する一方、緊縮的な財政政策や金融政策を重視し、成長を刺激するため需要喚起を目指す短期的な措置よりも長期的な構造改革が必要だと指摘している。

それに対し、「需要サポート見解」は、債務の増大を抑制し、インフレ率の上昇を食い止める必要性を認識しながらも、景気を押し上げ、所得拡大、雇用創出、金融セクターの強化という好循環を生み出すため、短期的に需要を拡大する措置が必要だと強調している。

過去2―3年、経済に関する世界の議論は、この2つの見解の間で揺れ動いてきた。2009年春や現在のように成長に対する不安がとりわけ強い時期には、すべてではないにしても、国際通貨基金IMF)をはじめとする金融・財政当局は需要を喚起する政策を重視する傾向が高まる。しかし、成長を取り巻く霧が晴れ始めれば、早々に「オーソドックスな見解」が盛り返し、緊縮財政策や長期的な金融の健全性に関心がシフトしてきた。

こうした動きは、どちらの「見解」に与したとしても危険なサイクルとなる。医師は患者に抗生物質を投与する際、症状が改善しても抗生物質の服用を途中でやめないよう注意を促す。途中で服用をやめれば、症状が再発するリスクがあるばかりか、抗生物質が効かなくなる恐れがあるためだ。
経済政策にしても同じことだ。需要促進を重視している私のような人々は、景気拡大策が講じられる期間が短すぎれば成長を軌道に乗せることができないばかりか、政策の有効性が損なわれ、政策に対する信頼感も低下すると懸念している。

東京で開かれたIMF・世銀会合がただちに効果を発揮することはないだろう。だが、需要を持続させ、緊縮策がもたらす弊害を避ける必要があるとの認識をIMFが示したことは、中期的に非常に重要な意味を持つ可能性がある。もちろん、次に経済が不安定化した時までIMFがそうした認識を持ち続けた場合ではあるが。

(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官)

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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