イスラエル首相、対イラン「線引き」を要求(WSJ日本版から引用)

ノアの洪水の前から、人類史の中心地である中東。いましばらくは、多極化していく可能性が高いが、いつか世界統一政府ができるのだろうか。

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【ニューヨーク】イスラエルのネタニヤフ首相は27日、国連総会での演説で、イランは核爆弾を作るのに十分な濃縮ウランを来年夏までに手に入れるとし、これを阻止するため、イランが「越えてはならない一線」を設けるよう世界に求めた。

同首相は、イランが核爆弾開発に向けて進んでいることを表すパネルを示しながら、「時間がない、全く時間がない」と強調。イランは既にウラン濃縮の第1段階を完了したとし、戻ることのできない点―第2段階の完了と濃縮度90%―を示す赤い線をパネルに書き込んだ。

 ネタニヤフ首相は「イランは70%のところまで来ている。第2段階の相当なところまでだ。現在の濃縮率で見ると、来年夏にはイランは中間濃縮を終えて最終段階に入るだろう」との見通しを示した。その上で、「そこからは核爆弾製造のための濃縮ウランを持つまでにわずか数週間しかかからない」と述べた。

 同首相は、イランの核兵器開発を阻止するための時間が少なくなっており、その脅威を真剣に考えなければならないと繰り返し述べている。この日の演説で同首相は「私は、イランに対する一線を引けば、イランは後退し、制裁と外交交渉のための時間を持てることになると信じている」とし、「この線は戦争につながらず、逆に戦争を回避できる。核武装したイラン以上に世界を脅かすものはない」と語った。

 今回の同首相の演説はおそらく、イスラエルがこの問題に独自のやり方で対処する前の最後の訴えとなりそうだ。同国はここ数週間、イランのウラン濃縮計画が続行されれば、直ちに一方的な軍事行動に出ると何度も警告。米国の期待さえ無視している。

 米オバマ政権は、米国を紛争に引き込み、米国の大統領・議会選挙の直前に中東全域での戦争に拡大する公算の大きいイスラエルの軍事行動を阻止しようとしている。

 イスラエルは、イランが第2次大戦中のナチス・ドイツによるホロコーストを否定し、イスラエルの破壊を呼び掛け、イスラエルを射程に収めるミサイルを開発し、イスラエルに敵対するアラブの武装グループを支援していると指摘し、イランの核武装イスラエルの存在を脅かすとしている。ネタニヤフ首相は「核武装していないイランのこうした攻撃性を考えると、核武装したイランの攻撃性はどうなるのだろうか」と述べた。

 イランはその核計画が平和利用のためのものだと反論しているが、イスラエルと米国、それに他の西側諸国はイランの主張を退けている。

 ただイスラエルはイランが核兵器を製造しようとしていると主張しているが、米国はイランが最終決定はしていないとみている。

 オバマ大統領は武力行使を示唆してイランをけん制している。米国はイランが地下深くに埋め込み、通常の空爆では破壊できない核施設を攻撃するための非常に強力なバンカー・バスター爆弾を保有するが、イスラエルはいざというときに米国が支援するかどうかを強く疑っている。

 一方、ネタニヤフ首相の演説の少し前、同じく国連総会で演説したパレスチナ自治政府アッバス議長は、イスラエルは東エルサレムでの入植のための民族浄化をしていると非難した。同議長は「これはパレスチナ人の家々を破壊することによる、パレスチナ人に対する民族浄化運動だ」と強調した。

 また、パレスチナ自治政府の国連における国際的な承認に向けた交渉を始めたと述べたが、これをいつ国連総会に申請するのか、具体的な日取りは示さなかった。自治政府は総会に対してオブザーバー国家としての承認を申請する予定だ。同政府は昨年、安全保障理事会に国家として認めるよう求めたが、実現しなかった。

AP通信

記者: Associated Press
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