混戦模様のエジプト大統領選 民主主義の試金石(WSJ日本版から引用)

エジプトはどうなるか。

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【カイロ】エジプトで昨年2月にムバラク政権が崩壊して以来初となる大統領選挙が、23日から始まる。アラブ世界にとって民主主義の概念が一変しようとしている。

 今回の選挙は、軍に支えられた独裁主義から、民主主義による民政への同国の不安定な移行にとって最大の試練となる。

エジプトでは世論調査はあまりあてにならないが、候補者13人中4人が有力候補として浮上している。最有力候補は元外相でアラブ連盟前事務局長のアムル・ムーサ氏で、同氏は宗教国家の建設に反対するリベラル派の世俗主義者。当選すれば、この60年余りで初めて軍部出身でない大統領が誕生することになる。

 しかし、選挙戦は引き続き混戦模様で、ムーサ氏の大統領確定には程遠い状況だ。ここ数週間の選挙戦で、軍部を支持基盤に持つアハマド・シャフィク前首相が支持を伸ばした。同氏は軍部の支持を得ている。シャフィク氏も世俗主義者だが、より重要なのは、同氏が当選すれば1952年以降のエジプトの軍政が継続することだ。

 シャフィク氏の支持率が急伸してきたことは意外な展開であり、今回の大統領選での軍偏重主義をめぐる新たな疑問が浮上している。

 ムーサ氏もしくはシャフィク氏といった世俗主義者のいずれかの勝利は、エジプト有権者の意向の大幅な転換を意味する。わずか6カ月前の同国の議会選挙では、イスラム主義政党が70%の圧倒的な得票率を得ていた。

 両氏は2人のイスラム主義の候補者と競っている。そのうち1人はイスラム原理主義組織ムスリム同胞団の傘下政党、自由公正党ムハンマド・モルシ党首で、同氏は選挙戦に出遅れ、当初は支持がごく限られていたが、ここ数週間に勢いを増している。

 選挙戦終盤のシャフィク氏とモルシ氏の支持率の伸びにより、ムスリム同胞団ムバラク前政権のメンバーと政治力を求めて争うという構図が浮き彫りになり、結局のところ、エジプトの政治がほとんど変わっていない可能性があることを示唆している。

 今回の大統領選での4人の有力候補のうち残りの1人は、ムスリム同胞団元幹部のアブデルムネイム・アブルフォトフ氏。同氏はイスラム教保守派だけでなく、世俗主義のリベラル派や一部のキリスト教有権者まで票に取り込むことを目指し、一段と穏健なイスラム主義を礎に選挙活動を行ってきた。

 23、24両日に実施される投票で過半数を獲得する候補者がいない場合、上位2人による決選投票が6月16日に実施される。

記者: Charles Levinson
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