日銀会合は現状維持へ、欧州緊迫で一段の円高・株安なら追加緩和も (Bloomberg.co.jpから引用)

そろそろ短期的な円高の極みの時期となるのか。

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5月21日(ブルームバーグ):日本銀行が22、23日開く金融政策決定会合は、前回会合で追加緩和に踏み切ったばかりということもあり、現状維持が予想されている。もっとも、欧州債務問題の深刻化により円高・株安が進行しているため、金融市場が一段と混乱して景気の下振れリスクが高まれば、追加緩和もあり得るとみられている。

ブルームバーグ・ニュースが有力日銀ウオッチャー14人を対象にした調査では、全員が政策の据え置きを予想した。日銀は前回4月27日の会合で、資産買い入れ等基金における長期国債買い入れを10兆円増額する追加緩和を実施した。それから3週間余りしか経っていないことから、ひとまず今回は現状維持が決定されるとみられている。

しかし、野村証券の松沢中チーフストラテジストはリスクシナリオとして「為替相場が1ドル=76円を試すような展開になった場合、財務省の為替介入とともに追加緩和が行われる」とみる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストも「追加緩和の可能性は現時点で20%」としながらも、「今後、円高、株安が一段と進行すれば、その可能性は上昇する」という。

1−3月の実質国内総生産(GDP)は堅調な個人消費と復興需要の本格化を受けて、前期比年率4.1%増と大幅なプラス成長となった。日銀の前田栄治調査統計局長は14日のブルームバーグとのインタビューで「昨秋ころから外需が鈍化し、公共投資もまだ増加してなかった割には、国内の民間需要は思いのほか堅調に推移してきた。国内民需には自律的な要素があるように感じている」と述べた。

下振れリスクは高まった

しかし、シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「前回会合以降の経済・金融動向としては、ギリシャ情勢に絡んだ国際金融市場の緊張の高まりと中国景気の一段の減速の2点が重要だ」と指摘。これらは「日本の輸出の回復力を当面抑制するとみられ、輸出が持続的な増加に転じるのは7−9月期以降となるだろう」という。

震災関連の復興需要と個人消費の堅調さが下支え要因となり、「国内景気は当面、年率1.5−2%程度の成長ペースを維持する」と村嶋氏は予想するが、「復興需要の効果がピークアウトし、エコカー補助金の予算払底が見込まれる年度下期に輸出が横ばい圏にとどまれば、景気は足踏み局面を迎える可能性もある」と指摘。「前回会合以降、景気の下振れリスクが高まったと評価される」という。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「大型連休が明けてギリシャショックや米経済指標の鈍化懸念が台頭し、リスクシナリオ顕在化の確率が高まりつつあるため、日銀としては息がつけない状況が続きそうだ」と指摘する。18日の円相場は1ドル=79円台前半と3カ月ぶりの水準に上昇。日経平均株価終値は前日比265円28銭安の8611円31銭に下落した。

緩和見送りでも市場の反応は限定か

SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジストは「欧州ではギリシャの政局混迷で、同国のデフォルト(債務不履行)懸念、およびユーロ圏離脱の可能性も視野に入ってきた」と指摘する。野村証券の松沢氏は「実際にこのシナリオになれば、昨夏どころか、リーマンショックをも超えるショックになるだろう」とみる。

ただ、日銀が今会合で追加緩和を見送った場合の市場の反応について、村嶋氏は「追加緩和に対する期待は高くないため、金融市場の反応は限定的なものにとどまるだろう」とみる。信州大学の真壁昭夫経済学部教授も「金融市場でも今回の追加緩和はないとの見方が多いと考えられ、市場への影響はほとんどないだろう」という。

日銀が16日実施した資産買い入れ等基金における残存2年以下の国債買い入れオペで、応札額が予定額を下回る札割れが初めて発生。18日の長期国債買い入れ(輪番オペ、残存1年以下)でも2006年2月22日以来の札割れが発生した。日銀は4月27日会合で同基金の買い入れ対象国債の残存期間を2年から3年に拡大しており、16日に実施した残存2−3年対象の買い入れオペには7倍の応札が集まった。

次の一手の本命は7月

岩下氏は「3年以下の国債買い入れが定着するにはまだ時間を要する。日銀はすぐに残存年限の長期化を進めることはないだろう」とみる。ただ、「今後、追加緩和を繰り返す(3カ月に1度ぐらいのペースを想定)過程で、残存年限の長期化を検討するとすれば、最初の関門は14年度の経済・物価見通しを示す10月の展望リポート時」と指摘。延長期間については「3年の次は4年が自然だろう」という。

東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは「次の一手のタイミングは展望リポートの中間レビューが行われる7月が本命」と見る。しかし、「為替や株価、海外の情勢次第では、6月に前倒しの公算がある」としている。============================================================= ◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)【2014年4−6月以降】SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジスト、JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストモルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト【2014年7−9月以降】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト野村証券松沢中チーフストラテジスト(0.0−0.1%から0.1%へ)【2014年10月以降】クレディスイス証券の白川浩道チーフエコノミスト【2015年以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト、信州大学の真壁昭夫教授、シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストバークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト=============================================================無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)*T  12 12 12 13 13 13 13 14

6末 9末 12末 3末 6末 9末 12末 3末-------------------------------------------------------------調査機関 14 14 14 14 14 14 14 14中央値 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10最高 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10最低 0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05-------------------------------------------------------------三菱UFJ・MS 石井   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10SMBC日興証 岩下  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10みずほ証 上野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10東短リサーチ 加藤 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10JPモルガン証 菅野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10第一生命経研 熊野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10BNPパリバ証 河野 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10モルガン・スタンレーMUFG 佐藤 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10東海東京証券 佐野   0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05クレディS証 白川 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10信州大 真壁 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10野村証 松沢 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10シティG証 村嶋 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10バークレイズC証 森田 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

(注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は政策金利「0.0
−0.1%」の現状維持。「『日銀サーベイ金利予想、経済・物価情勢、
金融政策の展望コメント」を21日朝に送信しました。

記事についてのエディターへの問い合わせ先:
Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;
大久保義人 yokubo1@bloomberg.net

更新日時: 2012/05/21 06:00 JST
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