本当は緩和やりたくなかった日銀、一貫性なく市場混乱−水野元委員 (bloomberg.co.jpから引用)

デフレを物価安ではなく通貨高と捉えれば、円の供給を増やしても物価安が物価高へ変わる可能性は低いとわかるのでは。円の価値を下げることにより、そのうち物価が上がってしまうことはあり得るだろう。

引用開始
4月18日(ブルームバーグ):日本銀行の審議委員を務めたクレディ・スイス証券の水野温氏取締役副会長は、デフレ克服に向けた措置として、必ずしも効果的でなく本当はやりたくないと思っている政策を日銀が2月会合で打ち出してしまったため、その後の情報発信に一貫性がなくなり、市場参加者を混乱させているとの見方を明らかにした。16日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。

日銀は2月14日、消費者物価指数の前年比上昇率1%が見通せるまで強力に金融緩和を推進していくと表明。これを受けて市場参加者の間では、日銀がデフレ脱却により積極的になったとの期待が高まったが、日銀はその後2会合連続で政策の現状維持を決めた。

2004年−09年に日銀審議委員を務めた水野氏は「日銀が市場の期待に働き掛けることの重要性にようやく気付いて2月14日に動いたと信じた市場参加者を日銀はがっかりさせてしまった」と指摘。今月27日の決定会合で「何もしないという選択肢はもはやないだろう」とした上で、「長期国債を5兆円ないし10兆円買うだけなら、恐らく為替市場や株式市場に対して効果は期待できない」と言う。

白川総裁は2月14日の会見で「最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとする」と表明した。一方、3月24日の米国講演では、一転して「バブル崩壊後の積極的な金融緩和政策はもちろん必要だが、副作用や限界についても意識する必要がある」と述べた。

市場を味方にすることに失敗

水野氏は「2月14日の決定・会見とトーンが非常に違う。同じ人がどうしてあそこまで変わってしまうのか、一貫性がないと受け止められても仕方がない」と指摘。「白川総裁は市場機能をゆがめることは避けたいと思っているので、政策金利はゼロ%にしてないし、長期国債の大量購入も基本的にやりたくないはずだ。そういう日銀からすると、多分、本当はやりたくない政策をやっている」と語る。

さらに、「先進国の中央銀行の政策の枠組みは収れんしてきており、市場の期待に働きかける方向にかじを切っている」と指摘。日銀も同じグループに入ったと市場はいったん思ったが、その後の二の手、三の手がなく、「市場は日銀の情報発信に戸惑っている。日銀は市場を味方につけることに失敗している」と語る。

水野氏は2月14日の決定について「議事要旨を読むと、政策委員全員が何か熱くなってしまって、深い議論をせずに中長期的な物価安定のめどを取りまとめ、10兆円の長期国債購入増額を決めてしまったことが伝わってくる」と指摘。市場に対してデフレ脱却の決意表明をしたまでは良いが、「どういうパス(道筋)で政策効果が波及していくのかについても、あまり深い議論がされていない」という。

デフレ脱却の道筋、納得できる説明ない

水野氏は「長期国債だけを買い続けることで、どういうパスでデフレ脱却に効果があるか、納得ある説明を聞いたことがない」という。金融市場では、日銀が今月27日の決定会合で資産買い入れ等基金で購入する長期国債を増額するとともに、買い入れ対象国債の残存期間を現在の2年以内から5年以内まで延長するとの見方も出ている。

水野氏は「それがインフレ期待を高めるかというと、逆の効果がある」と指摘。「日銀の政策が将来的にインフレ期待を高める効果があるのであれば、イールドカーブ金利の利回り曲線)は立つはずだが、これが寝ているということは、日銀の政策はデフレ克服には役立たないと市場が評価しているということだ」と指摘する。

白川総裁は海外での講演で、1980年代後半に金融引き締めが遅れたことがその後、資産バブルの発生、崩壊を招いたと繰り返し指摘している。水野氏は「白川総裁の就任以降、資産インフレ発生を懸念する結果、インフレ期待の低下を助長してきた面がある」という。

根強いデフレ期待を変えるために

水野氏は「包括緩和策は限界に近づいている」と指摘する。日銀が10年10月に打ち出した包括緩和は長短の国債、コマーシャル・ペーパー(CP)、社債、指数連動型上場投資信託ETF)、不動産投資信託J−REIT)など、さまざまな資産を購入することで緩和効果を狙う枠組みだ。しかし、「実際は日本の資本市場に厚みがないため、国債以外の資産は大して買えていない。たとえばETFはまだ買えるはずだが、国債ばかり買っている」と水野氏は話す。

その上で「財政がこれだけ悪いのにイールドカーブが寝ているということは、デフレ期待がいかに強いかということだ」と指摘。デフレ期待を変えていくために「日銀は少なくとも株価の下支えすることや、円高進行に歯止めを掛けなければならない」としている。

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/04/18 09:33 JST
引用終了