【コラム】米株式市場、過去20年で最も過小評価との見方も(WSJ日本版から引用)

アメリカ経済の行先にちょいと強気な見方もある。

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【チャペルヒル(米ノースカロライナ州)】現在の株式市場は、過去20年のどの時点よりも良い価値を示している――これは、最近のこのコラムで読者が目にしていることとは違う。たとえば、私は、超短期の見通しから現在の市場の安心感は強すぎ、コントラリアン的見地からは弱気であると指摘した。
私はまた、エール大学のロバート・シラー教授で有名になった景気循環調整後PER(CAPE)など、より長期的な指標が、市場がアンダーバリューの領域よりもオーバーバリューの領域の終わりに近づいていることを示しているとも指摘した。

 しかし、すべての投資家、特にコントラリアンにとって、逆の見方を検討することは大切だ。それが、ノーム・フォスバック氏ほど長く、優れた実績を持つ人物によって展開されているならなおさらである。

 フォスバック氏は、50年近く、科学的アプローチから綿密に株式市場を研究してきた。彼は30年間、インスティテュート・フォー・エコノメトリック・リサーチを率い、その間、有名な投資の教科書『Stock Market Logic』を執筆、幾つかの投資アドバイザリーの編集を手がけた。現在は、『Fosback’s Fund Forecaster』というニューズレターを出版している。

 先週後半に出版された最新号でフォスバック氏は、「マーケットの基本的なポジションは、20年で最も良好な形に展開した」と大胆にも指摘した。

 彼の計量経済モデルは、株式市場は今後1年で19%、向こう5年間では89%(年間ベースで14%近く)上昇すると予想した。

 フォスバック氏のモデルは、予測に役立つと彼がみた指標を数多く含んでいるが、彼によると、現在の米市場の主な基本的問題は、「国内企業業績」「国内株のバリュエーション」「米連邦準備理事会(FRB)の政策」だという。以下は、それぞれの項目についての彼の見方だ。

・企業の収益性は過去最高にある。「税引き前利益が過去最高水準に増加しただけでなく、実効税率の低下が税引き後利益を過去よりもさらに高い水準へと導いた。…税引き後利益が国内総生産(15兆ドル)の10%だとすると、株主に配当を支払った後でも企業に入るキャッシュはネットで少なくとも年間1.5兆ドル。今、それが企業の年間ベースのキャッシュ保有高を実質的に倍増させている。別な言い方をすれば、流動性が膨大ということだ」

・過去最高益にもかかわらず、S&P500種株価指数のPERは1990年当時に戻っている(営業利益をもとに計算)。もちろん、1990年代は、過去の米株式市場のなかで最も強気な時代のひとつだった。

・「金融政策は依然として積極的な緩和モードにある。」金利は、「過去最低」にとどまっており、マネーサプライは拡大している。

 では、欧州についてはどうなのか。強気相場に向かう様相とはいえ、欧州という重要な地域の経済成長鈍化に米市場が妨げられることはないのか。

 フォスバック氏の答えはノーだ。欧州に対するメディアの執着は、実際の行為が間近で行われているのに、視線を向こうに向けさせる「巧みなごまかし」に過ぎないという。

 強気相場のシナリオを台無しにする材料は何かあるのか――もちろんだ。

 皮肉なことに、フォスバック氏が認識する主な悪材料とは、現在の環境がいかに米企業に適しているかということから来ている。「現在の企業利益と税環境の価値を損なう大きな欠点があるとすれば、環境があまりにも良好で、これ以上良くなり得ることがほとんど想像できないことだ。つまり、これ以上の改善は考えにくいという単純な理由から、企業利益の今後の自然な道筋はおそらく下向き、ということになるだろう」

 しかし、企業利益が伸び悩んでも(フォスバック氏はこの可能性は極めて低いと考えている)、PERの上昇により市場は上昇に向かう可能性が高い。

 言うまでもなく、読者はフォスバック氏の楽観的な評価には賛成できないかもしれない。しかし、そうであればなおのこと、彼が指摘する要因がなぜ彼の信じる強気材料にならないのか、答えを見つける必要がある。

(執筆者のマーク・ハルバート氏は、バージニア州のハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストの創設者。1980年以降、160以上の金融ニューズレターの助言の追跡調査を実施している)
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