2012年の米経済見通しに影を落とす4つのリスク(WSJ日本版から引用)

このままだと大統領選の行方が分かりにくい。オバマ辞任でドル安、そしてQE3や中東危機、バイデン大統領ヒラリー副大統領候補で不景気を突破できるのか。オバマを何で辞任させるのか。

引用開始
米国経済の回復の歩みは2012年も鈍いものとなりそうだ。

 民間のエコノミストの大半は12年の米経済成長率が2%の緩やかな伸びになると予想している。住宅市場問題と精彩を欠く労働市場、政府支出削減などが重し になるとみられるためだ。また、欧州では緩やかな景気後退入りの兆しもみられ、エコノミストらはこうした海外からの影響についても警告している。

ウォール・ストリート・ジャーナルのエコノミスト調査によると、今年の経済成長率は約1.7%で、来年はそれよりは若干の改善が予想されている。

 今年最後になって景気回復が意外な強さをみせたことは確かで、多くのエコノミストは第4四半期の予想成長率を3.5%以上に上方修正した。今後ポジティブサプライズが出る可能性も排除できない。

 しかし、12年の見通しには以下の4つの問題が影を落としている。

世界経済の軟調―米国の輸出を脅かし、欧州危機が一層深刻化したり、あるいは別の問題が発生した場合は雪だるま式に問題が大きくなる可能性がある。

 米調査会社IHSグローバル・インサイトによると、世界の成長率は今年の約3.0%から12年には2.7%程度に鈍化が見込まれるが、地域によって大きな差があるとみられ、欧州はおそらく景気後退入り、中国などの発展途上国はインフレを抑制しつつ次第に成長軌道に戻ると予想される。

 その結果、米国の輸出市場が破壊されるとまではいかなくても、制約されるだろう。米国輸出セクターは今年大半を通じて、比較的好材料を提供してきた。

 IHSグローバル・インサイトのチーフ・エコノミスト、ナリマン・ベーラベシュ氏は、「世界経済が鈍化することは確実。問題はそれがどれだけ鈍化するか、ということだ」と述べている。

住宅差し押さえ問題―住宅市場回復のネックとなり続けるだろう。

 住宅セクターは差し押さえ物件が価格や販売件数、着工件数の重しとなって、低迷が続くだろう。今年になって、空き家やローン返済が困難な住宅数は減ったが、それでもまだ多くの問題が未解決のままだ。

 バークレーズ・キャピタルによれば、「シャドウ(影の)」在庫と呼ばれる、差し押さえの手続き中か、3カ月以上ローン支払いが延滞している住宅の数は、10月に340万件と、ピーク時の420万件から減少した。同社は12年末には270万件まで減少するとみているが、それでもまだ景気後退が始まった時の水準(150万件)を大きく上回る。

精彩欠く労働市場―米企業は採用を続けるだろうが、そのペースは鈍く、失業率の大幅改善にはつながらないだろう。

 ウェルス・ファーゴでは、1月当たりの平均雇用増を12万3000人と予測しているが、これはほぼ人口の増加ペースに見合った水準に過ぎない。

 つまり、政治的に重要な失業率は11月の大統領選まで8%を超える水準が続くことになる。

 エコノミストは、需要の伸びが鈍いことに加え、失業中の労働者が持つスキルと企業が欲しているスキルとが合致していないなどの構造的な問題によって労働市場の改善は今後ももたつくと予想している。

 ウェルス・ファーゴによれば、雇用の伸びが軟調なことで、個人所得も「若干の改善」にとどまることが予想される。

 これは消費者にとって12年に問題があることを意味する。エコノミストによれば11年は消費支出を増やしたが、所得が伸び悩めば支出を増やし続けることはできない。

 12年の個人消費支出は、エコノミストが予想する今年第4四半期の年率2.6%に対し、約2.0%と比較的緩やかな伸びになるとみられる。

政府の緊縮財政―成長の阻害要因となり続けるだろう。

 IHSグローバル・インサイトによれば、この1年、州政府と地方自治体セクターの人員削減と予算削減が経済成長を妨げてきたが、12年には経済成長にとって0.3%ポイントのマイナス寄与が予想される。一方、連邦政府の支出削減は成長に0.23%ポイントのマイナス寄与となる見通しだ。

 だが、単なる予算削減以上に、ぎりぎりまで合意を渋る下院の態度が企業と消費者の信頼感に影響するだろう。エコノミストが予想する12年の経済成長2%は11年の給与税減税が来年も延長されることを想定したものとなっているが、それはまだ実現していない。

 米経済は来年も07〜09年のリセッションからの回復を続けるだろうが、完全な回復までの道のりはまだ長い。

記者: Conor Dougherty
引用終了