「電話で首」は正当か─ ヤフーのバーツ元CEO解任劇にみる不適切な解雇方法(WSJ日本版から引用)

やはり、人として互いに向き合って意思の疎通を図らないと、何事もうまくいかないんだろう。

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 従業員を解雇するには、それなりのやり方がある。電話での通告は尋常ではない。

 このやり方に抗議を示したのが米インターネット検索大手ヤフーの元最高経営責任者(CEO)、キャロル・バーツ氏だ。同氏は6日午後、ヤフーの全従業員あてに次のような電子メールを電撃配信した。「非常に残念だが、わたしはたった今、ヤフーの取締役会会長から電話で解任を申し渡された」

報道によると、弁護士が用意した解雇通知を淡々と読み上げるロイ・ボストック会長に対して、バーツ氏はその卑劣さを責めた。「あなたはもっと品位のある人だと思っていた」。バーツ氏はボストック会長にこう言い放ったという。8日にフォーチュン誌に掲載されたインタビューで同氏が語った。

 この件に関し、バーツ氏はコメントの求めに応じていない。ボストック氏は広報担当者を通じ、コメントを差し控えるとした。

 大手企業のCEOが電話で解雇されるなどほぼ前代未聞だ。ヤフーの事業に詳しい関係筋は「直接会って解任を言い渡すべきだったが、(そうしたお膳立ては)なされなかった」と述べた。

 配慮の有無はともかく、電話での解雇はバーツ氏の後任探しに悪影響を及ぼす可能性がある。「われわれ(取締役)は自分たちのやっていることを分かっていない、と有望な後任候補に警鐘を鳴らしているようなものだ」と、あるIT(情報技術)業界の人材スカウト業者は話す。

 経営幹部を電話で解雇する合法的な理由が存在する場合もある。雇用を専門とする法律事務所オグレットリー・ディーキンズのパートナー、チャック・ボールドウィン氏は、CEOの雇用契約書には、解雇が決定されたら直ちに本人に通知することを定めた条項が含まれている場合があると話す。

 決定時に本人が出張中の場合、電話での解雇は正当化される可能性があるとボールドウィン氏は言う。また、CEOが不適切な行為を犯し、直ちに解雇が必要な場合は、電話での解雇が適切である可能性があるという。

 ただし、業績不振を理由に解雇する場合は、本人と直接会って伝えるようボールドウィン氏は毎回顧客にアドバイスしていると話す。ボールドウィン氏が過去数年に担当した案件で、本人が出張中のため取締役会が電話での解雇通告を検討していたケースが3度あったが、いずれの場合も誰かを出張先に行かせ、直接会って解雇を通知するよう忠告したという。

 解雇した従業員を警備員に建物の外まで見送らせるといった、一般的に推奨されている解雇慣行も、電話での解雇よりも従業員を激怒させ、訴訟にまで発展しかねない場合がある。

 人事担当者や警備員などの第3者を解雇通告の場に立ち会わせる、解雇通告の際に本人のポジティブな面に触れる、といった解雇に用いられる一般的な手法について、従業員がどのような反応を示すかを確かめる調査が2009年に行われた。

 その結果、解雇されるにしても、おおむね誰しも褒められるのは悪い気はしないが、通告後に警備員に出口まで見送らせるようなことをすると、そのプラスの効果は「損なわれてしまう」ことが分かった。さらに、企業倫理に関する学術誌「ジャーナル・オブ・ビジネス・エシックス」に掲載された今回の調査論文によると、第3者を立ち会わせるのは「敬意に欠ける証拠とみなされる」という。

 論文の共同著者である米ノースカロライナ大学のマシュー・ウッド准教授(経営)は「第3者を立ち会わせる、ポジティブな面を強調する、といったアドバイスは恐らく法務部門が行ったものだろう。法務部門はそうした対応が必要だと言うかもしれないが、それをされた人はかなりネガティブな反応をする」と話す。

 経営の専門家は、解雇の理由を説明することも推奨している。米オハイオ州で約1000人の解雇された人を対象に行った調査によると、理由を説明した場合よりも、しなかった場合の方が、元の雇用主を相手に訴訟を起こす確率が10倍も高いという。

 作家のペネロピ・トランク氏(40)は、過去にさまざまな理由で10回ほど解雇されたことがあるという。バーツ氏と同じくトランク氏も元ヤフー従業員で、07年に解雇されたが、通告は面と向かって行われた。「ひどい解雇の仕方ではなかった。理由も説明されたし、突然でもなかった。時間をかけて手続きを踏めば、解雇された方はそれを消化できる」とトランク氏は話す。(トランク氏によると、解雇の理由は同氏が書く記事が的外れだということだった)

 米バイオテクノロジー会社アコーダ・セラピューティクスのロン・コーエンCEO(55)は、初めて従業員を解雇したときのことをいまだに覚えていると話す。同氏がわずか31歳のときで、「最後にはハグをせずにいられなかった。彼女はわたしの肩で泣いていた」と述べ、解雇は今でもつらい作業だと話す。

 だがコーエン氏は経営スタイルを改善し、解雇通告までに十分警告や指導を与えるようにしたという。「長年かけて学んだことがある。部下が解雇をまったく予期していなかったとしたら、それはあなたが管理職としての仕事をしていないということだ」

 コーエン氏は「人に対しては一定の敬意と礼儀を示すべきだ」とし、同社は電話で解雇を言い渡したことは一度もないと述べた。

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記者: Dana Mattioli and Joann S. Lublin and Rachel Emma Silverman
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