商品相場上昇は物価安定の脅威でない=FRB副議長(WSJ日本版から引用)

近い将来、インフレ(通貨安)が来ないとお札をすり散らかした国々はやっていけなくなる。しかしインフレをいつまでもやっているわけにも行かない。あと10年くらいたったら、案外デフレが世界の基調になっているのかも。デフレ(通貨高)は、お金持ちよりも庶民にやさしい経済となりそうだ。だから、現在人気がないのかもしれない。

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米連邦準備理事会(FRB)の当局者らは、FRBが当面は欧州中央銀行(ECB)による利上げに追随しそうにないという明確なシグナルを発しており、商品相場上昇が米国のインフレにつながるとの考えを否定している。
 FRBのジャネット・イエレン副議長は11日、ニューヨーク経済クラブで、米金融政策が「引き続き適切」との考えを示した。原油穀物など商品相場の最近の上昇について、「消費者物価に長期的影響を与えたり、景気回復の腰を折ったりする公算は小さい」ため、「金融政策のスタンスを大きく変更する理由にはならない」と述べた。家計や企業が将来的にインフレ突入はないとみているということが重要だという。
一方、ニューヨーク連銀のダドリー総裁はこの日、東京で講演を行い、食品やエネルギーなどを含む総合的な物価の上昇について、「過剰反応しないことが重要だ。商品相場の上昇は、おそらく長引くことなく一時的な現象にとどまる」との考えを示していた。イエレン副総裁のコメントも、この見方に沿っている。
 一部地区連銀の総裁は、FRBがインフレ高進防止に向けた手立てを急ぐべきだと訴えている。FRBは成長を支えるためのあらゆる手段を講じており、金融緩和政策を終了しなければ、国民や投資家がインフレ対応への信頼感を失いかねないとみているためだ。
 バーナンキ議長の下、FRBは2008年12月から短期金利をゼロ近くに据え置いているほか、昨年は長期金利抑制による一段の景気てこ入れに向けて6000億ドルの国債買い入れ策を追加的に実施した。
 セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は先週のインタビューで、「経済は強くなり、インフレ率は上がり、期待インフレ率はわれわれの予想より高い」と語り、「(買い入れ策の)中止が論理的な動きだ」との考えを示している。
 ECBは先週、目標の2%弱を上回っているインフレの高進防止のためとして、主要政策金利を0.25ポイント引き上げ1.25%とした。米国との政策の違いについて、イエレン副議長は「FRBもECBも、それぞれの経済情勢に適切と思う措置を講じている」と述べた。
 FRBの当局者にとって、商品相場上昇が以前より厄介なのは確かだ。たとえばイエレン副議長は、食品や原油の価格上昇が続けば、物価や消費支出に対する「大きなリスク」になるとの考えを示した。ただ、同副議長のコメントの大半は、商品相場の上昇が続くという脅威は大きくないというところに焦点が置かれている。
 イエレン副議長とダドリー総裁のコメントは、26、27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策変更発表はなく、国債買い入れ策が早期に切り上げられることなく予定通り6月に完了するであろうことを示唆している。
 米国野村證券エコノミスト、デービッド・レスラー氏は「FRBが(国債買い入れ策を)完了するかどうか疑われているとすれば、きょうの彼女(イエレン総裁)のコメントで払しょくされたはずだ」と述べた。
 11日の先物市場の動きは、投資家がFRBは12年序盤まで利上げしないとみていることを示唆している。先物トレーダーは現在、12年2月までにFRBフェデラルファンド(FF)金利を0.5%に引き上げる可能性を76%とみている。
 物価に対するイエレン副議長の姿勢は、国際通貨基金IMF)と同様だ。IMFは11日に発表した世界経済見通しで、米経済は(高失業率や余剰生産能力など)停滞している部分があまりに多いため、インフレ率は引き続き低水準にとどまるとの見方を示している。同国消費者物価の上昇については、10年の1.6%に対し、今年が2.2%、12年が1.6%と予想している。
イエレン副議長は、FRBの政策は商品相場を押し上げていないと主張。商品相場上昇は、これまでのところ、物価安定に対する脅威ではないとしている。
 同副議長によると、先物市場は商品相場が今後数カ月で「現行水準近辺で落ち着くか、場合によっては下落する」ことを示唆している。「実際にそうなれば、ガソリンやヒーティングオイルの価格はかなり早くに横ばいになりそうだ。食品小売価格の頻繁な上昇はあと数カ月しか続かないだろう」という。ただ、この予想が間違っていれば、FRBに行動を促す圧力が高まりかねない。
 同副議長は、いくつかのインフレ期待指標が上昇していると認めながらも、大幅ではないと述べた。同副議長によると、トムソン・ロイターミシガン大学が行った調査で、消費者は今後5〜10年よりも今後12カ月のインフレを懸念していることがわかった。そうした傾向はガソリン価格上昇に関連しており一時的なことが多いという。
 消費者が長期インフレを見込んでいるのであれば、FRBは対応を迫られる可能性がある。インフレ期待が高まれば、その期待自体がインフレを高進させることがあるためだ。イエレン副議長は1970年代のようなインフレは「容認できない」と述べた。

記者: Jon Hilsenrath

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