中国金融改革の衝撃に揺れる市場、金利「解放」で混乱続く公算(REUTERSから引用)

しばらくは混乱するのかもしれないが、これで中国が終わるわけじゃない。
日本も、農業を自由化してみれば多少混乱もするだろうが、結果農業が発展するのではないだろうか。

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[東京 25日 ロイター] - 中国の金融改革の衝撃にマーケットは揺れている。同国が目指すキーワードは市場化。今まで人為的に低く抑えてきた金利を「解放」することで、過剰な設備投資や不動産投資の温床となっていたシャドーバンキングなどの問題を解決しようとしている。

長期的には金融正常化が期待されるが、短期的には金融機関や企業の破たんなども予想されるため、中国株は軟化を続け、日本株やドル/円を圧迫している。マクロ手法による大規模な改革であり、半年は混乱が続く可能性が大きいとの指摘も出ている。

<高金利を使うマクロ的手法に転換>

中国は秋にも7つの大改革を行う見通しだ。そのトップに来るのが金融改革であり、金利の市場化、自由化がその手段となる。

中国が現在抱えている問題である過剰設備や投機的な不動産投資を可能にしたのは、低く抑えられた金利だった。指標となる7日物レポ金利(加重平均)は20日に一時28%まで上昇したが、それまではリーマンショック時を除いて、ほぼ3─5%のレンジで推移。7─10%の成長率を記録しながら、資金調達コストが人為的に低く抑えられたことが過剰投資を膨張させていた。

中国の1─5月の融資総量は、前年同期比52%増加。さらに大手国有企業は資金を低利率で容易に借りることができるため、借りた資金を基準貸出金利の数倍の金利で中小企業に貸し出すいわゆる「シャドーバンキング」(影の銀行業務)に精を出し、過剰融資はさらに増加。現在、シャドーバンキング市場は約350兆円規模に達するといわれている。

一方で、内需拡大は一向に進まず、富が偏る中で国民の不満も増大。行政主導というソフトランディング方式でうまくいかなかった改革を、現政権は高金利というマクロ手段を使って過剰融資を断つ構えだ。

もともと5月24日に中国国家発展改革委員会は、今年の改革指針を公表し、金利の自由化と人民元改革を継続する方針を示していた。

指針は国務院が了承しており「金利の市場志向改革を着実に進め、預金・貸出金利双方の変動幅を段階的に拡大する」としている。

このため金利上昇はまったくの「寝耳に水」というわけではなかったのだが、「GDP伸び率が8%を切っても何もしない中国政府をみて、市場もなめていた」(国内証券)ことが、混乱に拍車をかけているという。

金利自由化が本格的に始まり、資金調達コストが上昇すれば、採算が取れないプロジェクトはとん挫し、融資していた金融機関も立ち行かなくなる。このため経済的にも混乱が生じる可能性があるが、長期的には正常化に向かう過程での「痛み」とも言える。

シャドーバンキングが横行する理由として、中小企業などが正規のルートで資金を借りにくいという金融的な抑圧があるためだと言われており、金融改革を通じ、正常な資金調達システムを構築できれば、長期的な経済発展につながる。

中国経済に詳しいエコノミストの肖敏捷氏は、中国人民銀行広東省政府直轄のノンバンク広東国際信託投資公司(GITIC)を閉鎖した1999年に似ていると指摘する。「中国は当時も、過剰な投資問題を抱えていた。GITICの閉鎖を機にノンバンクは消え、銀行再編につながっていった。今回はその経験があるうえ、外貨準備も豊富に有する。金融システム問題につながるような場合は、手を打つだろう。ただ、企業の破たんも予想され、半年程度は混乱が続く可能性がある」との見方を示している。

<中国株に振り回される日本株

25日の東京市場は、引き続き中国株に振り回された。午前は中国の上海総合指数.SSECが下げ渋ったことを好感し、GLOBEX(シカゴの24時間金融先物取引システム)で米株先物も上昇し、日経平均.N225は一時172円高まで上げ幅を拡大させた。「中国株が下げ渋ったことで安心感が出た」(準大手証券投資情報部)という。

だが、後場に入り様相が一変。上海株が下げ幅を拡大させると、日経平均.N225は急速に軟化。中国関連株を中心にマイナス幅を広げ、一時300円を超える下落となった。「中国株の売り材料が新たに出たわけではないが、中国株下落と連動するように、日本株にも短期筋による売りが出てくる」(大手証券トレーダー)という。ドル/円もリスク回避の円買いが強まり、97円後半から97円前半に押された。

終盤は再び、中国株が下げ幅を縮めたことに合わせ、日本株も下げ渋るなど、中国株にらみの目まぐるしい展開となった。しんきんアセットマネジメント投信・運用部長の藤原直樹氏は「中国市場には依然、不透明感が強く、市場が安心感を取り戻すのはなかなか難しい。自律反発的な動きはあっても、積極的に上値を追う展開にはなりにくい。日本株には割安感も出てきており、売り物が膨らむ状況ではないが、中国株次第という展開がしばらく続きそうだ」と話している。

ただ、しばらく混乱は続くとしても、中国が「本気」で過剰設備の解消に向け乗り出せば、日本にとってもメリットが大きい。鉄鋼など中国の過剰設備のために、市況価格が採算が合わない程度まで下落している産業も少なくないためだ。また、内需拡大に成功すれば、輸出先としての魅力はさらに増す。2003年のりそな銀行への公的資金注入を機に日本株が切り返したように、中国が金融改革に成功すれば、2007年をピークに軟調な展開が続いている同国株価の転機となる可能性もある。

(伊賀 大記 編集:田巻 一彦)
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