焦点:オペラから合同演習まで、米中で深まる軍事交流(REUTERSから引用)

世界統一政府ができるまで、各大陸毎に中心となる国や地域ができるのだろう。アジアでは中国の可能性が高い。その中で日本はどう成長し続けていくのか。

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[ワシントン 22日 ロイター] 米国が中国軍によるスパイ行為を非難したり、アジア太平洋地域で中国がますます強硬な態度を取ることに懸念を示したりする一方で、両国の軍事関係は緊密さを増している。

最初の主な雪解けの兆しは2011年、米ワシントンのケネディセンターで開催された米軍と中国軍のバンドによる合同コンサートだった。中国人民解放軍(PLA)の制服を着た著名な男性歌手と米軍の女性軍曹がデュエットを組み、オペラ「椿姫」を熱唱してみせた。

もう少し真面目な例を挙げれば、中国は今月に南京市で米軍当局者らと海賊対策を協議。また、米国は来年の環太平洋合同演習に中国を招待している。

防災や疾病対策といった分野で両国軍が互いの行動を知り、協力するといったコミュニケーションの強化は偶発的な衝突リスクを減少させることにつながる。

米太平洋軍司令部のマイケル・ケルツ少将は大きな変化を感じているという。ケルツ氏によると、同氏が2011年に中国当局幹部らと会談した際、中国側は事前に用意された要点を読み上げるだけで、場の雰囲気は堅苦しいものだった。「(会合や情報のやりとりにおいて)量・質ともにかなりの改善が見られる」とケルツ氏は語る。

長い間、軍事的に比較的孤立してきた中国にとって、外部との軍事協力強化は戦略の核心部分を占めている。中国は国連安全保障理事会常任理事国5カ国の中で、国連平和維持活動に最も多く要員を派遣している。

米国にしてみれば、こうした状況は敵となりうる国についてより知ることができると同時に、中国をグローバルなシステムにさらに引き込めるという利点がある。

また、中国軍とのコミュニケーション強化は米国に、中国が封じ込めだと非難する自国のアジア重視路線を説明する機会を与えることになる。米太平洋軍司令部だけでも、軍事医学や合同救助演習など、今年は約40回の交流が予定されている。

<スパイ活動>

非公式な接触も以前より受け入れられている。特に西側の元軍当局者らが緩やかなネットワークを築き、現役の軍関係者を連れてくることもある。

また、中国軍が欧米での経験と英語習得をより重視していることも両国軍のコミュニケーションの一助となっている。中国初の空母の指揮官Zhang Zheng氏は完璧な英語を話し、英国の統合軍指揮幕僚大学への留学経験を持つ。

軍当局者や外交官らも、中国当局者が個人の電子メールアドレスを共有したり、個人的な会話に興じたりといった姿は10年前には考えられなかったと指摘する。

とはいえ、こうしたことが、いくつかの対立する主要な問題において中国軍と米軍の緊張関係を和らげてくれるわけではない。

米当局者らは中国が衛星攻撃兵器の開発のため、ミサイル実験を準備しているとの懸念を示しているほか、米国の同盟国である日本やフィリピンなどと中国の間で起きている領有問題は摩擦を生み出している。

そして、最も根強い争点はサイバーセキュリティー問題だろう。

国防総省は今月6日に発表した報告書で、中国が軍事的な研究開発等に利用し得る技術や専門性の強化に向け、海外投資、商業合弁事業、学術交流、帰国した留学生や研究者らの経験に加え、国家が支援する産業・技術スパイを利用していると指摘した。これに対し、中国人民解放軍機関紙・解放軍報は8日付の論説で、「米国こそ真のハッキング帝国だ」と批判した。

スパイ行為は西側にとって主要な懸念事項であり、中国軍関係者が米国などの施設を使用する場合は通常、その前に「リスク評価」を実施し、使用後はセキュリティー専門家がバグがないか確認しているという。

<商業的利益>

専門家らは、PLAの一部が知的財産の盗用は利益を生むと認識していると指摘。サイバーセキュリティー専門家で、米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員であるジェームズ・ルイス氏は「それをやめることは難しいだろう。彼らにとって金儲けの手段を失うことを意味するからだ」と述べた。

こうした中、米国と中国は今年初めて、戦略対話の一環としてサイバーセキュリティーについて正式に協議を始める。

先週、ワシントンで開かれたロイターのサイバーセキュリティー・サミットで、米国家安全保障局(NSA)長官でハッカー行為に対抗する「サイバー軍」の司令官も務めるキース・アレクサンダー氏は、適切な時期に同氏の後任も中国側と会談する意向であると語った。

ただ、米国は中国に対し「静かな外交」ではなく、公然と異議を申し立てる方法を取ることもあり、米海軍作戦部長のジョナサン・グリーナート大将は、米国政府が中国のハッキング行為に対して今年は公然と抗議することを決定したと明らかにした。

以降、当局者らからは、中国のハッキング行為が若干減少したとの声も聞こえてくる。

両国軍の協議では特に、米国のアジアを重視する「戦略的リバランス」政策をめぐって緊迫する場面も起こり得る。

米太平洋軍司令部のケルツ氏によると、中国当局者らは太平洋を2つに分割して、片方を米国が、もう片方を中国が支配するべきだと語ったという。同氏は「基本的に、米国はそうしたことはしないし、太平洋地域の国々のほとんどが望まないことだ」とし、「(中国当局者も)理解しつつある」と話した。

(Peter Apps記者、翻訳:伊藤典子、編集:本田ももこ)
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