焦点:米国のシェールオイルブーム、熱狂感薄れる地域も(REUTERSから引用)

資源大国を目指しているというのは、表向きの話なのだろうか。

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[ヒューストン/ニューヨーク 20日 ロイター] 米国のシェールオイル産業は過去3年間にわたり、あらゆる期待をことごとく凌駕してきた。生産の拡大スピードはどの予想よりもはるかに速く、採掘業者は競い合って新たな送油管の空きスペース確保に走った。だが、開発の周辺域ではそうした状況が変わるかもしれない。少なくとも当面の間は。

米国内のシェールオイル採掘地域のうち、開発が進んでいないコロラドオハイオ両州からのニュースは、全米に広がった熱狂感から人々を現実へと目覚めさせるきっかけとなった。過去数年、どのプロジェクトも一夜にして成功を収め、生産が拡大の一途をたどっていた時代の変わり目を知らせるものだ。

ウティカ・シェールプロジェクトの拠点であるオハイオ州は16日、2012年の同州の原油生産量が70万バレルを下回ったと発表した。これは小型原油タンカー1隻分をかろうじて上回る量にすぎず、ノースダコタ州のバッケンの1日の生産量に満たない。州政府高官も「当初予想に届かなかった」と述べざるを得なかった。

また15日にはNuStar Energy(NS.N: 株価, 企業情報, レポート)が、稼働率の低い石油精製品用のパイプライン2本について、コロラド州ニオブララのシェール採掘地域からテキサス州向けの原油輸送用に切り替える計画を延期すると発表した。潜在顧客からの十分な協力が得られず、2度にわたり計画実現に失敗していた。

いずれの動きも業界の専門家にとっては驚くニュースではなく、同情すべき状況の変化による影響が大きかったとみられる。

鉄道輸送の利用拡大でNuStarのパイプラインの利用に関しては長期契約のメリットが縮小する見通し。オハイオ州で採掘業者は、新たな手法が見つかれば大量の液体ガスとコンデンセートの生産が可能だ。

しかしすべてを考え合わせると、溢れるほどの熱狂と、各地のシェールガス開発に一斉に集まった投資ラッシュは曲がり角に差し掛かっている。

水圧破砕法や水平掘削などの基本技術は、多くの地域で頁岩から大量の原油を採取するのに十分だが、さらなる技術革新が必要だ。

「テクノロジーがすべてのカギを握る」と、テキサス州オースチンのRBNエナジーのアナリスト、サンディー・フィールドマン氏は語る。同氏は「結局のところ、資源は地下にあるので、最適な場所を見つけ出し、良い条件で採掘することだ」と強調した。

現時点で、活況に沸くバッケンやイーグルフォード、パーミアン盆地が成長を持続し、国内の原油生産を過去20年間で最大に押し上げ、米国の輸入原油への依存を低下させたことを疑う声は少ない。しかし過去3年間の猛スピードが永遠に続くことはないだろう。

IHSのシニアリサーチディレクターのピート・スターク氏は「企業は自分たちの生産地域を確立したが、どのようにして長期的に最も効率良く効果的に生産できるかを会得するには依然として多くの難題が山積している。現時点では野球の試合の2イニング目が始まったところだ」と述べた。

<希望かなわず>

ニオブララとウティカが投資家を失望させた最初のシェール採掘地ではない。ミシガンのコリングスウッドのちょっとした好況は2010年の数カ月間しか続かなかった。カリフォルニア州モンテレーも採掘業者の計画がとん挫した。それでも今回の期待外れの大きさには注目すべきだ。

わずか2年前にチェサピーク・エナジー(CHK.N: 株価, 企業情報, レポート)の元最高経営責任者(CEO)、オーブリー・マクレンドン氏はウティカの地図を手に5000億ドルの価値があると誇示。大手石油会社トタル(TOTF.PA: 株価, 企業情報, レポート)は採掘権取得に数十億ドルを投じた。州の地質学者は13億─55億バレルという膨大な埋蔵量があると推計していた。

シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)コモディティリサーチ部門のマネージングディレクター、エド・モース氏は「ウティカはこれまでのところ誇大宣伝に見合う結果を出していない」と指摘する。

ロイターの試算によると、稼働中の油田の生産量は日量平均80バレルで、ノースダコタの約10分の1だ。

<鉄道輸送が優位に>

コロラド州におけるNuStarの最大の問題は、他のパイプライン事業者や鉄道業者との競争だ。同州は数年前にニオブララでの本格的な開発が始まったが、原油生産はそれ以降、10万バレル弱しか増えていない。

セムグループ(SEMG.N: 株価, 企業情報, レポート)はコロラドから米国の原油先物の中心拠点であるオクラホマ州クッシングまで527マイル(848キロメートル)に及ぶ原油パイプラインを建設中。2014年前半に完成予定で、すでに輸送能力を2倍に拡大した。プレーンズ・オール・アメリカン・パイプラインもコロラド州で新たな輸送能力の拡大を進めている。

これらのプロジェクトにより、スノコSUN.Nが保有するコロラド州コマースシティの製油所へ輸送している既存の日量3万─4万バレルに加えて、日量23万バレルの輸送が可能になる。

ヒューストンのチューダー・ピッカリング・ホルトの中流リサーチ部門のディレクター、ブラッドリー・オルセン氏は「質の低いプロジェクトは排除される時期に来ている」と語る。

生産効率の良い地域は「スイートスポット」と呼ばれる。コンサルタント会社のベンテックによると、デンバージュレスバーグ(DJ)とパウダーリバー盆地(PRB)は今年1月時点で生産量が日量17万バレルに達した。13年末には日量23万5000バレルに増加すると見通しだ。

原油の鉄道輸送という選択肢は、油田からの生産がいつまで続くかで不確実性を抱える生産会社にとって魅力だ。鉄道ターミナルは建設コストが安く、使用開始までの期間が短くて済むし、長期契約を求められることもない。

精製業者にとっても、5年から10年にわたり特定の原油に拘束されることなく、十数カ所の鉄道ターミナルの中からその時点で最も低価格の原油を選択できるようになるのは好ましい。

アロン・エナジーUSA(ALJ.N: 株価, 企業情報, レポート)のポール・エイズマン最高経営責任者(CEO)は「ニオブララでもバッケンでも、ウエスト・テキサスでもどこでも構わない。市場に絶好の機会をとどけるために柔軟に列車を動かせるのが鉄道の利点だ」と指摘した。

(Kristen Hays、Jonathan Leff記者)
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