社説:森元首相訪露 首脳交流につなげよ(毎日jpから引用)

ロシアとの平和条約締結に関して、安部首相はオバマ大統領とどのような話をしたのであろうか。


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ロシアのプーチン大統領が、安倍晋三首相の事実上の特使として訪露した森喜朗元首相と会談した。首相親書を手渡した森元首相に大統領は北方領土問題解決への意欲を改めて表明。安倍政権発足後、初の首脳会談実現に向け、停滞が続いた日露関係は新たな段階へ踏み出した。

 プーチン氏にとって16回目の会談となった森氏は、日本政界で最も信頼する「親友」だ。2人は01年に日露首脳として「平和条約締結後、歯舞群島色丹島を日本に引き渡す」と定めた56年共同宣言を領土交渉の出発点とすることで合意している。日本は国後島択捉島を含む4島返還を求める立場は変えていないが、今回の訪問は、日本が01年当時の姿勢に立ち戻り柔軟な考えで交渉を再開するシグナルだったともいえる。

 プーチン大統領は昨年、「引き分け」という言葉を使って日露双方の譲歩の必要性を訴えた。その真意について大統領は今回の会談で、柔道場の絵を描いて、今は隅で行き詰まっている両国が再び中央に出て試合を再開する必要があるという趣旨の説明をしたという。

 ロシアが対日関係改善に積極的な理由はいくつかある。開発が進まず人口流出の激しいロシア極東を、アジア太平洋市場への資源輸出基地として発展させるには、インフラ整備などで日本の技術力が必要だ。米国の「シェールガス革命」がもたらした世界エネルギー市場の地殻変動で、資源の輸出先として日本の可能性が改めて注目されている。さらに、中国の台頭や北朝鮮の核開発などで緊張が高まる東アジア情勢をにらみ、極東の発展や北極海航路の開拓を国家戦略の重要な柱とするロシアの安全保障という意味でも、日本との協力は欠かせない。北方領土問題の解決は、こうした大きな構図の中に位置づけられている。

 ロシアの優先課題は経済だ。森元首相の訪露に先立ち、国営石油企業ロスネフチのセチン社長が訪日し、日本企業にオホーツク海の大陸棚共同開発への参加を呼びかけた。26日にはイシャエフ極東発展相が訪日し、極東開発で日本の協力を求める。長期にわたる体力と忍耐が必要な対露経済協力は、日本が国策としてロシアとどう向き合うかという戦略がなくては立ちゆかない。

 領土問題の解決にあたって日露間の認識に依然隔たりがあるのも事実だ。しかし、中国などと緊張要因を抱えた日本にとって、地域の安定やエネルギー資源の確保という広い視点からも対露関係をとらえ直す必要がある。その中で領土問題打開への道筋を探っていくために、今回の会談を足がかりに、首脳同士の活発な相互交流にぜひつなげてほしい。
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