【社説】支持する政党がないのも仕方がない日本の残念な選挙(WSJ日本版から引用)

老害で支出を抑えることができない日本。インフレで貨幣価値を下げて実質増税という形でしか老害をかわす方法はないのだろうか。

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日本は早急に解決が必要な大問題をいくつも抱えている。年率で3.5%の減少となった7-9月期の国内総生産GDP)、軟調な輸出、減少傾向にある工業生産などは次の景気後退が近づいていることを示唆している。人口の減少と高齢化もかなり進んでおり、債務残高がGDPの約2倍という日本政府の財政状況はこれまで以上に危なっかしく見える。来月には衆議院選挙が行われるが、残念なことに候補者たちはもっともらしい解決策すら提示できていない。
たとえば野田佳彦首相は、財政再建への取り組みで消費増税を決めたことを自らの経済面での功績のように主張している。だが、あまりにひどい政策であったため、この増税案を可決させる条件として、実現が難しい「名目3%、実質2%」の経済成長率を目標とする景気条項を法案の付則に残すことに合意せざるを得なかった。国民はこうした動きに今も反発しており、野田政権の崩壊のきっかけにもなった。

 野田首相のその他の成果としては、昨年の福島第1原発事故で高まった国民の声を受けて、日本の原発依存を減らすことに渋々合意したことが挙げられる。とはいえ、世界でも最高水準の料金を徴収している地域独占電力事業会社の改革に関して、政府はいまだにはっきりとした道筋を示していない。

 自民党安倍晋三総裁も似たり寄ったりである。同党は、3年間で15兆円の追加公共投資を行うことで、ケインズ主義的だった「日本の失われた20年」に戻ることを約束している。法人税率を20%に引き下げるという同氏の提案は評価できるが、長引く不況のせいで現在法人税を支払っている日本企業はあまりにも少なく、その即効性には限りがあるだろう。

 安倍元首相は米国、カナダ、東南アジア諸国などが関わっている環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加にも反対している。日本にとってこのような協定は、国内市場を開放し、特にサービスの分野に刺激的な国際競争をもたらし得る最高の機会である。それでも元首相が反対しているのは、TPPがコメ農家のあいだで不評だからである。

 一方で、自民党は消費増税を概念レベルでは支持している。同党幹部が、その実施をめぐって野田首相を批判しているにもかかわらずである。安倍元首相がケインズ主義的公共投資を行うのは、見せかけの成長率を押し上げ、消費増税を実施に移すためではないか、と考える皮肉な見方もある。

 希望の兆しがあるとすれば、それはそでに控えるより有望な政治家たちだ。大阪の行政改革で有名になった橋下徹市長は、東京から地方への権限委譲を公約にしている。みんなの党は小規模だが、消費増税反対、TPP賛成など、いくつかの経済政策で正当な主張をする党として浮上した。しかし、こうした新党の動きは始まったばかりだ。有権者にはその信頼性を見極めるための時間が必要だ。TPPや原発依存に関する考え方が異なっているにもかかわらず、橋下市長が石原慎太郎都知事と連携したことは悪い兆候であり、日本維新の会が政策よりも個性を大事にしているという見方が広がった。

 日本は自由貿易、外国企業への規制緩和、公益事業の見直しなど、幅広い改革を必要としている。ところが、政治家たちの提言を聞いていると、今回の支持政党を選びづらい選挙で有権者がどの党にも為政権を与えない可能性が高いというのも当然だと思えてくる。
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