採用担当はコンピューター―職歴よりも適性検査を重視する企業が増加(WSJ日本版から引用)

何事も、感情的にならず、事実で判断すると、結果として満足という感情を得られやすい、ということか。

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 米事務機器大手ゼロックスXRX0.00%は、コールセンターの要員を採用する際、以前は経験者かどうかを重視していた。だが、コンピュータープログラムによると経験は重要ではないようだ。

 コールセンター要員に適しているかどうか、すなわち5000ドル(約39万円)の教育費用を回収する前に会社をやめてしまわないかどうかを判断する上でむしろ重要なのは人間性だという。データによると、創造力に優れた人は投資コストの回収に必要な6カ月以上会社にとどまる可能性が高く、探求心の強い人はそうでない。
 「仮説の中には妥当でないものもあった」とゼロックスの法人サービス部門のコニー・ハーベイ最高執行責任者(COO)は話す。

 半年間試した結果、人員の自然減率が5分の1減ったことから、ゼロックスでは現在では4万8700人のコールセンター要員の採用を全てソフトウエアに任せている。ソフトウエアは、「自分はよく質問をする方だ」とか「自分の言ったことは信じてもらえることが多い」などの質問を候補者にする。

 このように採用の判断をアルゴリズムに頼る企業が増えてきている。ソフトウエアが考慮する要因は通常想像するものとは異なる。かつては職歴や面接内容を基準に採用が行われていた職種の人材選定に今は適性検査とデータ分析が用いられている。仕事ができるかどうかを単なる勘で判断するだけでは不十分だとの認識が雇用者の間で高まっているためだ。企業は今やコスト削減と生産性向上に迫られており、すぐにやめてしまわないかどうかや労災を乱用しないか、窃盗を働かないかなど、特定の可能性を見極めようと必死だ。

 適性検査は以前から採用に利用されている。だが今はそのスケールが違う。高性能のコンピューターや高度なソフトウエアによって、より多くの候補者の評価やより大量のデータの蓄積、候補者の私生活や興味に対するより深い洞察が可能になっている。

 飲酒癖や通勤時間など多様な基準を用いて候補者の選別を行っている企業もある。だが結果的にマイノリティー(少数派)や障害者を除外することになれば、裁判沙汰になる可能性がある。そこまでいかなくても、不公平感を招いたり、気味悪がられる可能性さえある。

 こうした新たな採用ツールの利用を含め、従業員のデータを収集・分析する取り組みは企業の間で拡大している。米調査会社ガートナーによると、いわゆる「人材管理ソフトウエア」に対する世界の投資額は2011年は前年比15%増の38億ドル(約2970億円)となっている。

ゼロックスでは、時間給労働者の採用・管理を支援している新興企業エボルブ(米カリフォルニア州サンフランシスコ)から助言を受けている。エボルブは候補者に一連のテストを受けてもらい、その後の仕事ぶりを評価することで、理想的なコールセンター要員を見極めるためのモデルを開発した。データによると、理想的な人材とは通勤時間が短く、安定した交通手段があり、ソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)を1〜4種類利用しており、探求心や感情移入がそれほど強くなく、創造力のある人だ。

 ゼロックスでは採用候補者に30分のテストを受けてもらい、それによって性格特性や職場で想定されるシナリオにどう対処するかを判断している。結果はスコア化され、適性が低い人は赤、中くらいの人は黄色、高い人は緑で表示される。ゼロックスでは、トレーニングで補完できると思った場合は、黄色のスコアの候補者でも採用しているが、採用するのはほとんど緑のスコアの候補者だ。

 採用は重要な業務の1つだが、従来の手法は正確性が著しく欠けていると専門家らは指摘する。採用の判断をする人によって学歴や職歴、容姿など基準が大きく異なるためだ。中には直感で決める人もいる。直感は時に正しくもあるが、候補者の仕事ぶりを予測する上ではほとんど役に立たない。統計的手法を用いて採用を行っている企業は、採用担当者の偏見の影響を少なくすることで、結果を向上させることができると話す。

 米インターネット検索大手グーグルGOOG+0.81%の上級副社長でエボルブの取締役を務めるラズロ・ボック氏は、長年本能や直感で行われてきた個人的な判断の多くはソフトウエアで代用できるとまでは言わないが、補完することは可能だと話す。「エボルブのような企業が当面目指しているのはソフトウエアを人材採用に生かすことだが、いずれ昇進や人材登用にも役立てることができる」とボック氏は述べ、「優良企業でさえもまだ多くを当て推量で行っている」とした。

 ソフトウエアの助けを借りて採用を行っているのは大企業だけではない。廃棄物処理を手掛けるリッチフィールド・マネジメント(ミシガン州フリント)もそうだ。同社は200人のゴミ収集要員を雇用しており、けがをしやすい人や労災を乱用する可能性の高い人を選別する方法を探していた。

 そこで1年半ほど前、エグゼンプラー・リサーチ・グループという小さな会社が開発したオンラインテストを利用してみることにした。テストでは「会社の利益を最大化することに誇りを感じる」や「仕事については金銭的条件がいかに良いかしか関心がない」といった質問にどの程度同意するか、あるいは同意しないかを回答する。

 テストの目的は、候補者の感情的な安定性や労働倫理、麻薬や飲酒に対する姿勢を判断することにある。スコアが悪ければ、けがをするリスクが高いと判断される。リッチフィールドによると、テストを利用してから労災請求は68%減り、現在では不適任の候補者を除外するために採用担当者に必ずテストを利用するよう義務付けている。「スコアの低い人を例外的に採用することは一切しない」と、ゼネラルマネジャーのフレッド・ベゼッティ氏は話す。

記者: Joseph Walker
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