魅力増す日本国債−他の安全資産の地位低下で(WSJ日本版から引用)

この記事の通り、他よりまし、ということで買われているのだろう。円高が極まれば資金も日本の株式市場にも入り、徐々に円安へと向かいだすのだろう。

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【東京】財務省理財局担当審議官の鷲見周久(すみ・ちかひさ)氏は、海外投資家の日本国債需要を押し上げている要因について割り切った考え方をしている。日本の国債よりましな行き先がないためだという。

 鷲見氏は、債券利回りや為替レートなどが点滅する電子ボードがかかったオフィスで、「投資家は投資しないといけない」とし「たとえばジムに行くとき、洗濯したての靴下がなくて、比較的ましなやつを選ぶ、そういう投資家がいると思う」と話した。
日本国債市場では、現金の安全な置き場所を求める海外投資家の資金の流入が増えていることから、国債の海外保有が過去最大に近い76兆円(全体の8.3%)に達した。

 このことは利回り押し下げにつながる一方、円の対ドル、対ユーロ相場を押し上げる効果もあることから、政府が円安誘導に向け介入するかもしれないとの観測があらためて浮上している。

 10年物国債の利回りは24日、0.735%と、前日につけた9年ぶりの低水準0.72%から上昇した。ニューヨーク市場の円相場は、対ユーロで1ユーロ=94.12円と11年ぶりの高値を記録し、対ドルでは1ドル=78.18円と、7週間ぶりの高値を僅かに下回る水準をつけた。

 2007年に世界的な信用危機が始まって以来、安全を求める投資家の資金が日本に流入している。競合する資金逃避先の地位が低下したことから、この傾向は今年加速した。投資家によれば、米英独など他の資金逃避先では中銀の積極的な動きで利回りが日本の超低金利に近い水準に押し下げられていることから、日本国債の魅力が増している。市場ウォッチャーは、欧州が当面苦境を脱しそうないと語る。

 10年物のドイツ国債の利回りは今年約36%低下し1.179%、米国債は約21%低下し1.486%と、予想されるインフレ率にすら届かない可能性がある。一方、日本はデフレのため、相対的にみて国債の魅力が高い。

 ドイツの2年物国債利回りはマイナスとなり、フランスとオランダの短期国債利回りもマイナスに転じている。これに対し、日本の2年物国債利回りは0.095%。

パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)で債券など600億ドルを運用するスコット・マザー氏は過去数カ月かけて、米独の国債から日本に資金を移した。例えばGISグローバル・ボンド・ファンドでは、日本への投資比率が3月末の0.1%から拡大し、6月末時点には約18%となった。ドイツの割合は24.8%から4.5%に縮小した。

 追加投資の約半分は1年以内の短期証券だ。為替ヘッジの影響を織り込んだ日本の短期国債リターンが他の主要国のそれを上回っているためという。

 各中銀が過去4年に円の外貨準備を積み上げた結果、円建ての外貨準備は22%増えた。海外企業も注目し、過去最高に近いペースで円建て外債(サムライ債)を起債している。今年の起債は169億ドルと、前年同時期の記録的水準に接近している(ディールロジック調べ)。

 経済成長の停滞、高い債務水準、数十年にわたる超低金利から脱せない国とは思えない現象だ。最近の日本国債に対する需要増加は、債務残高が1000兆円に近づくなかで起きた。これは経済規模の2倍を上回り、ユーロ圏加盟全17カ国(の債務)を合わせた金額に近い。格付け会社フィッチは5月、日本の長期国債を「A+」に格下げした。これは、エストニアスロバキア、中国と同じ水準だ。ただ、日本国債の利回りは、格付けが上のドイツや米国を下回っている。

 コロンビア・マネジメントでグローバル・ボンド・ファンドを運用するニック・ピファー氏は「日本国債は魅力がないが、鼻をつまんで保有するしかない物の1つだ」とたとえた。運用資産2億6300万ドルの同ファンドは、約10%を日本の国債社債に投資している。

 ピファー氏は日本国債の長所として、他の多くの国債に比べ市場が安定しており、リターンが予想可能なことを挙げた。

 保有するのは日本人投資家が圧倒的に多く、危機時に売る可能性が比較的低い。国内投資家の保有比率は90%超に上るが、この比率は米国では約半分だ。年金と保険会社の運用資金は将来の支給に向け円建て証券に投資する必要があることから、今後数年の国債需要はほぼ確実だと財務省の鷲見氏は語る。

 同省にも円相場上昇による影響への懸念はあり、国内の大手輸出企業は円高で利益が圧迫されていると語るが、鷲見氏は投資セミナーに赴き、潜在的買い手に対して日本への投資を勧めている。

 海外投資家の比率が増えていることについて、日本は懸念していないのかと聞かれることも多い。海外投資家は日本の財政が悪化すればびくついて逃げだし、国債価格の下落と金利上昇につながりかねないためだ。日本の国債市場は米国やドイツに比べ、海外投資家の割合はずっと小さいが、最も投資の多い短期債では、海外投資家の比率が20%近くに達している。

 鷲見氏によれば、海外からの投資の増加は全体的な投資家構成の改善になる。国内投資家による基本的な需要があまりに強いため、海外投資家が逃げ出しても国債市場が崩壊することは考えにくいという。

記者: Phred Dvorak 、Kosaku Narioka

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