原子力安全規制で合意できない日本 規制庁4月1日発足は困難(WSJ日本版から引用)

改革を進めるときには、織田信長のように既得権者をバッサリと切り捨てないと進まない。

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【東京】福島第1原発事故は、日本には独立性の高い原子力安全規制機関が必要だという大きな教訓を残した。日本の国会議員は総じてこの見方に同意している。しかし、メルトダウン炉心溶融)事故から1年以上経過しているにもかかわらず、独立機関をどう設立するか合意できないかにみえる。

日本では原子力規制庁が4月1日に発足し、信用を失った原子力安全・保安院に取って代わる予定だった。しかし、発足をわずか1週間後に控えているにもかかわらず、議員らは規制庁設置法案の詳細についてもめ続けており、同庁のシステムや同庁にどれほどの独立性を付与するかなどについてまだ話し合われている状態だ。

 この行き詰まりは日本の国会にとって新たな汚点だ。国会ではここ数年、与野党の対立によって最も基本的な法案以外通過しない状態が続いている。この行き詰まりは6年ほどの間に同じくらいの数の首相が入れ替わる事態をもたらした。政府は日本のその他の原発が安全で再稼働できると国民を説得できるように改革を実行したいと考えているが、この行き詰まりによって実現が困難になっている。

 日本政府はこれまで、規制当局があまりに原発事業者寄りになって、監視業務を真剣に行わない状況を容認してきたと厳しい批判を受けた。国際原子力機関IAEA)は日本に対し、「緊急事態においても利害関係者から一切の圧力を受けない」独立した規制機関を設けるよう要求した。

 原子力規制庁設置の推進派は同庁が過去と決別し、業界を監視する明確な権限を持つと述べている。

 細野豪志原発相兼環境相は最近、できるだけ早期に新規制機関を設立して抜本的に規制を強化して欲しいと国内外の人々が考えていることは理解している、と述べている。

 しかし、同庁設立に反対する野党議員や批評家らは、国際基準にのっとった規制機関を創設するには不十分だとして政府の計画を批判している。

 この問題に関する国会の論争を率いてきた自民党塩崎恭久官房長官はインタビューで、福島の事故の重大さと国際社会から受けた全ての助言を考慮して正しい結論を導き出す必要性を指摘している。

 日本の原子力業界を監視する機関は、根本的な利害相反に直面した省庁の下に置かれている。主要な規制機関である原子力安全・保安院は、原発を強く推進する経済産業省の下に置かれているからだ。

 また、業界の監視自体がバラバラに行われているという指摘もある。例えば原子力分野の技術や研究の監視を行っているのは文部科学省だ。このほか、事故発生当初には、別の助言機関である原子力安全委員会がその他の規制機関と政府高官とのスムーズなやりとりを妨げたこともあった。

 政府の提案によると、こういった点の大部分は変更されるとされている。同業界を監視する権限は原発を推進する省庁から離れるほか、主要な監視機能は1つの機関にまとめられる予定だ。

 しかし、政治の混乱によって原子力規制庁の創設時期は不透明になっている。野田佳彦首相は東日本大震災発生から1年を迎えた3月11日の記者会見で、同庁を「できるだけ早期に」発足させたいと述べたが、これは4月1日に発足させるとのこれまでの計画からの後退を意味する。

 この行き詰まりが長引くと、原発の安全基準と日本の危機対応能力の強化に向けたさまざまな方策の実施に空白が生まれかねない。このほか、夏季の電力需要のピークを迎える前に原発を再稼働するという政府の計画の実現が困難になる。

 関西電力八木誠社長は16日の記者会見で、新規制機関発足が与える影響について「全くよく分からない」とした上で「少なくとも規制庁の発足が遅れていけば、現行の原子力安全・保安院というプロセスで再稼動の審議が行われるではないかと思う」と述べた。

記者: Yuka Hayashi and Chester Dawson
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