ドル76円前半、米QE3観測で幅広くドル売り(REUTERSから引用)

アメリカのQE3への期待感から生まれる円高株高方向がいつまで続くのだろうか。

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 [東京 24日 ロイター] 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点とほぼ同水準の76円前半で推移している。前週末のドル/円の過去最安値更新を受け、安住財務相が朝方に円高けん制発言をしたことをきっかけに、海外勢が介入期待から一時ドル買いにまわり、ドルは76円半ばまで値を戻した。

 しかし、輸出企業の売りが上値を押さえたことに加え、にわかに米量的緩和第3弾(QE3)観測が浮上したことでドルクロスが幅広くドル売りになったこともあり、ドル/円もじり安に転じた。

 21日の海外市場では、ドル/円が一時75.78円まで下落し、過去最安値を更新した。ドルクロスで幅広くドル売りが出たことがドル/円に波及したほか、政府の円高対策に対する海外勢の事前の期待が強すぎたことで、しこったドルロングの投げが出たとみられている。

 円高進行を受けて、安住財務相はアジア時間朝方、円高が行き過ぎれば「断固たる措置」を取る必要があるとの考えを示した。22日に財務省の事務方に対して「どういうことでも対応できるように」と指示を出したことも明らかにした。

 これを手がかりに、海外勢の間で介入期待からドルロングを構築する動きが出て、ドル/円は一時76円半ばまで上昇した。しかし、輸出企業の売りがドルの上値を押さえたほか、にわかに浮上したQE3観測が幅広いドル売りを招き、買い一巡後のドル/円はじりじりと軟化した。

 「イエレン米連邦準備理事会(FRB)副議長の発言などをきっかけに、米QE3観測が浮上し、ドル売りを後押ししている」(大手銀行)という。イエレン副議長は21日、FRBは一段の金融刺激を与える手段を検討している、との認識を示した。追加の債券買い入れについては、FRBとして可能性を排除していないが、新たな買い入れを行う際、長期債以外の証券を買い入れ対象に含める必要が生じるかもしれないとした。  

 <にわかにQE3観測が浮上>

 QE3観測について、市場では「米国で景気回復がはかばかしくないため、QE3に踏み切る可能性が出てきた」(サザ インベストメント、カスタマー事業部の森宗一郎部長)と受け止める声が出ている。
ただ、このところの米景気指標には予想を上回るものもあり、景気が一本調子で悪くなっているわけではない。米長期金利も一時よりは上昇しており「QE3はないのではないか」(バークレイズ銀行チーフFXストラテジスト、山本雅文氏)とみる声も多い。サザ インベストメントの森氏も「QE3で決め打ちしているわけでなく、可能性も視野に入れるという程度。ギリシャ支援難航によるユーロ売りより新味があるため、注目されやすいのだろう」とみている。

 欧州の混乱が長く続き「ユーロは売り飽きた」(国内金融機関)との声は多かった。ユーロ売りを続けてきた結果ユーロショートが積み上がり、コストの悪いポジションが重くなっていることも事実で、ショートカバーが入りやすくなっている。「欧州の問題が一巡すればドル売りを狙いたい」(国内金融機関)という市場のポジションにも沿った動きになっている。

 <ユーロ/ドルは1カ月半ぶり高値>

 ユーロ/ドルは午後3時半までに1.3955ドルまで上昇し、1カ月半ぶり高値を更新した。日経平均などアジア株高に続き、米原先物などが上げ足を速め、リスクオンの動きになった。

 「23日の欧州連合(EU)首脳会議の内容が評価されているわけではなく、ドル売りの流れが波及しただけ。EUは問題の先送りが続くようにもみえる」(大手銀行)との声が聞かれた。ただ、ユーロショートが積み上がっているだけに、ユーロが戻るほどショートカバーを誘発する。「このまま1.40ドルまで上昇してもおかしくない」(大手銀行)との声が上がっている。

 バークレイズ銀行の山本氏は、ユーロの今後をみる上でのポイントは、26日のEU首脳会議としている。23日に明らかになった以上の対策が出て積極的なユーロ買いを誘発するのは難しいほか、これまで期待先行でユーロを買ってきた面もあり「ユーロは対ドル、対円で反落リスクがある。この場合ユーロ/円が100円方向に向かって売られるようなら、ドル/円は再び75円台に下落して最安値を更新する可能性もある」(山本氏)という。

 また、23日のEU首脳会議では、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)のレバレッジについて、フランスはドイツに譲歩してEFSFに銀行免許を付与し、ECBから資金供給を受けてレバレッジをかける案を取り下げた。

 かわって、EFSFを利用してイタリア・スペインの新発債投資家に部分的な保証を提供する案などが検討されている。ただ、イタリアの10年国債利回りは一時6%を超えるなど上昇傾向にあり、投資家のイタリアに対する信頼が十分かどうか危ぶむ声も出ている。「部分的な保証では、イタリアなどの資金調達を逆に難しくする可能性がある」(森氏)として、資金調達コストの上昇などにつながりかねないとの指摘も出ている。
<ドル/円の最安値更新局面で個人は押し目買い優勢>

 ドル/円が21日に過去最安値をつけた局面で「個人が出したストップロスの売り注文に出合いが成立する一方、それを上回る個人の押し目買いが入った。結果的に建て玉が増えている」(セントラル短資FX営業本部、武田明久氏)という。

 クリック365が公表しているデータでも、21日のドル/円のポジションは、ドル売りが前日に比べて1万8000枚以上減少した一方で、ドル買いは6万8000枚以上増加している。 

 (ロイターニュース 松平陽子)
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