EUが支援受け入れ国の格付け禁止検討―格付け機関は反発(WSJ日本版から引用)

アメリカとEUの綱引きが強まっている。格付けという基準値を作るモノが市場を動かすということをEUが問題視している。

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ブリュッセル欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のバルニエ委員(域内市場担当)は20日記者会見し、財政難から国際金融支援を受けている国や、そのための交渉をしている国の信用格付けを禁止する提案を行う方向であることを明らかにした。EUは11月9日に、格付けに関する新たな規制強化案を提示する予定である。

 バルニエ委員は「国際通貨基金IMF)やEUの国際支援を受けていたり、支援のための交渉をしていたりする国を特別に扱うのは妥当だと思う」と述べた上で、「欧州委が格付けを不適当と判断すれば、必要な期間、格付けを禁止ないし停止できる。この問題を真剣に検討している」と言明した。

EUは、金融危機発生以降格付け会社が危機を引き起こす一因となっていると非難し、格付け会社に対する規制を強化してきた。その一例としては、格付け会社の欧州部門に対し、EUの金融監督機関である欧州証券市場監督機構(ESMA)からの認可取得を義務付けたことがあげられる。

 格付け各社は格付け禁止案について、格付けよりはるかに大きな混乱を市場に及ぼすと反発している。フィッチ・レーティングズの広報担当者は「欧州委員会が市場の見方を規制し始めるようになれば、それは憂慮すべき動きである」と述べた。チャールズ・シュワッブのストラティジストであるキャシー・ジョーンズ氏は、「格付け会社が下す結論には同意できないかもしれないが、格付け会社は有益である」と語った。

 ムーディーズ・インベスターズ・サービスの広報担当者は、「格付けが禁止されば、欧州の信用に対する投資家の信頼を損ない、政府や企業などの発行体が資本市場に参加するのを妨げ、欧州債券市場の乱高下を増幅するだろう」と指摘。スタンダード&プアーズ(S&P)も「国債格付けの公表に対する規制は、信用リスクをめぐる透明性を低下させ、市場の不安定性を増す」と警告した。

 ユーロ圏諸国は、格付け会社を批判する一方で、格付け会社の見解を利用している。これら諸国は、ユーロ圏の融資制度である欧州金融安定化基金(EFSF)がトリプルAの格付けを保持していることを強調する一方、フランスや英国はトリプルAを維持するためできることは何でもすると表明している。

 バニエル委員は、格付け禁止案の詳細については明らかにしなかった。ただ関係者によると、格付けの禁止ないし停止の措置は、格付けが市場の乱高下をもたらしたり、金融市場の安定を損なう恐れがあったりする場合など、特別な状況下でしか実施されない。また、金融支援交渉により信用力が変化する事態が迫っている時も禁止される可能性があるという。

 S&Pは同日、ユーロ圏諸国が再びリセッション(景気後退)に見舞われれば、フランスやスペイン、イタリア、アイルランドポルトガルの格付けを引き下げることになろうとの見解を表明した。

記者: Laurence Norman and Jeannette Neumann
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