ブラジル中銀、予想外の利下げを発表(WSJ日本版から引用)

世界各国で金融を中心に経済全般に軋みが大きくなっている。

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サンパウロ(ブラジル)】ブラジル中央銀行は8月31日、政策金利を0.5%引き下げ12%にした。この予想外の利下げは、ブラジル政府のインフレ抑制への取り組みや中央銀行の独立性に疑念を生じさせる可能性がある。

12%に引き下げられたとはいえ、ブラジルの政策金利は依然世界で最も高い水準にある。ブラジル中銀は声明で、欧米経済の弱体化によってブラジルのインフレ上昇圧力が緩和され、高金利を維持する必要性が低下したと述べた。

 だがブラジルの動向を追っているエコノミストの一部は31日の発表に驚いており、ブラジルは希望的観測を抱いているにすぎない可能性があり、かえってインフレの一段の進行をあおりかねないとしている。ブラジルの主要インフレ指標はここ数週間、後退の兆しをほとんど示しておらず、インフレ目標の4.5%を依然上回る水準で推移している。

 さらに今回の措置はもっと厄介な影響をもたらしている可能性がある。政治的プレッシャーに関係なく金利を決定できるという、ブラジル中銀の独立性に対する信頼低下だ。利下げ発表の前日、ブラジルのルセフ大統領はラジオのインタビューで利下げを要求するかのような発言を行っていた。

 ブラジル中銀は厳密には米連邦準備理事会(FRB)のような独立性を持っているわけではない。だが、1990年代に当時4桁に達していたインフレ率を下げるため世界で最も強硬な金融政策を取って以来、基本的には政府とは独立して動いている。今回の利下げまでのブラジル中銀は、インフレ率が徐々に上昇していたことを受け、今年に入って5回利上げを行っていた。

 ルセフ政権は、高い金利が投機的な資金流入を誘発し、ブラジルレアルの上昇を招いているとして、政策金利を引き下げるよう、メーカーや工場労働者から政治的プレッシャーを受けていた。レアルは09年年初来46%も上昇しており、現地のメーカーは、中国など、通貨が過小評価されているとみられる国からの輸入品との競争で不利な立場に置かれている。

 だが、利下げがレアル安につながるかどうかはまったく不明だ。ブラジル政府は、昨年10月以降、海外投資家が同国の確定利付証券を取引する際にかかる金融取引税(IOF)の税率を3倍に引き上げたり、通貨の投機的取引を禁じるなど投機資金の流入を阻止するためにさまざまな策を講じている。

 こうした措置にもかかわらず、レアルは上昇を続けている。多くのエコノミストによると、世界的な商品(コモディティー)価格が近年急騰しており、ブラジルのような資源国の通貨は商品価格の高騰に伴って上昇する傾向があるという。

 一方で、今回の利下げは、発展途上国の多くが世界的な成長減速に利下げという選択肢で対応できる余地があることを物語っている。既に金利がほぼゼロの欧米や日本にはそうした選択肢はない。

記者: John Lyons and Jeffrey T. Lewis
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