日本の格付け見通し、安定的からネガティブに変更:識者はこうみる(REUTERSから引用)

このような格付けは、日本人の日本市場参加者を弱気にさせる効果もある。それを狙っていることすらありえる。本当に円債のリスクが高ければ、すでにもっと円安に振れているはずである。今しばらくは、欧米でも債務問題があり、世界不景気合戦総下げ状態となる可能性もあるが、その中でも日本はまだまだいける。景気が上昇する国の株式市場は魅力的になる。が、タイミングは難しい。上がると見せかけて、ズガンと下がることもありうる。それが今年なのか来春なのかは、わからない。

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[東京 27日 ロイター] フィッチ・レーティングスは27日、日本の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更したと発表した。福島原発事故の処理コストが依然不透明で、財政に多大なダウンサイドリスクが存在することが背景。

 市場関係者のコメントは以下の通り。

●足元の注目は円売りより米金利とドルの動向

 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFXストラテジスト 棚瀬順哉氏> 
 スタンダード・アンド・プアーズの後追いなのでサプライズはない。外国為替市場は冷静な反応。ニューヨーク時間のドル/円相場は株次第だが、足元で目立っているのは円売りというよりもドル売り。きょうのドル/円が81円を割り込んだのも明らかにドル安主導なので、米金利の動向を受けたドルの動きがいちばんの注目。きのうは弱い米新規失業保険申請件数と米国内総生産(GDP)で金利が下がってドルが売られた。きょうも同じようなことが起きればドル/円は下落する可能性が高い。

●日本の悪さは想定済み、インパクト限定的

 <住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>
 日本の状況の悪さはわかっていたこと。先進国がすべて悪いもの競争になっているなかでも、日本の悪さは際立っている。古くて新しい問題であるとともに、新しいが古い問題だ。為替に与えるインパクトは限定的。
アウトルックの変更であり実際に格下げされたわけではなく、また日本国債は現段階ではまだ国内で消化できているため、反応はしにくい。

●政治の体たらく、市場の関心は格下げ

 <ニッセイ基礎研究所 上席主任研究員 徳島勝幸氏>
 フィッチによる日本のアウトルック引き下げに違和感はない。日本政治の体たらくをみると、むしろ遅すぎる。債券やクレジットへの影響はほとんどないだろう。
 例えば、東京電力福島原発事故の賠償問題についても、誰がどの程度の金額を負担するのか見えていない中で、日本の財政悪化は避けられないのは事実だ。ほかの内外格付け機関4社は、日本国債について格下げ方向で見直し中。市場の関心はどこの格付け機関が先陣を切って、何をきっかけに格下げに踏み切るのかに移っている。6月は政局の流動化、月末に取りまとめられる税と社会保障の一体改革の行方、東電救済賠償法の立法化など材料は豊富だ。

●円債へのインパクトは限定的

 <SMBC日興証券 チーフ債券ストラテジスト 野村真司氏>
 政局は来週から不安定になりそうだが、6月末には社会保障と税の一体改革など、いろいろ出てくる予定なので、なぜこの時期にという感じがする。今回はあくまで見通しの引き下げであり、円債市場へのインパクトは限定的だろう。足元では格付けに反応して売られたときが結局、押し目になっている。

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