円高が覆い隠す「インフレの芽」、日米量的緩和はいつまで続くか(REUTERSから引用)

アメリカは、インフレ(通貨安)希望、EUはインフレ懸念で大げさに言えば少しデフレ(通貨高)でもいいよ、ということか。
アメリカの子分日本は、デフレ政策を採り続けてはいたが、親分に脅されお札を刷り増しだしている。親分は一時的に金利を上げてもお札を刷り増しすることは止められなさそう。

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[東京 25日 ロイター] 商品価格の高騰からくるインフレ圧力を円高が覆い隠している。しかし、円高では抑えきれない物価高が一部で頭をもたげてきた。
 欧州がインフレ厳戒態勢を敷くなか、日米両国のインフレ認識は適切なのか、量的金融緩和をいつまで続けるのか、金融政策の節度とアカウンタビリティー(説明責任)が問われている。   「円高がインフレ傾向を覆い隠している部分は大きい。だが、年末からのガソリン価格の上がり方などを見ても、覆いきれない物価上昇圧力が顕在化している。円高の効用も限界にきている」とマーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表、金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は指摘する。  
 「円高のおかげで物価上昇懸念が緩和されているが、5円ほど円安になれば、生活必需品を中心に物価上昇懸念が一気に台頭する可能性がある」と食品輸入商社アイガー貿易部・シニア為替アドバイザーの角田秀三氏は言う。
 「たとえ円安に振れなくても、過去に安価で仕入れた在庫が春先から品切れとなる見込みだ。その後は在庫価格が上がり、物価上昇圧力が強まるだろう。為替市場は日銀の物価認識より早くインフレに反応して、円売り(円の減価)に傾く余地が大きい」と角田氏は予想する。   
 25日のドルは82円半ば。2008年の高値(110.67円)に比べ約28%の円高、2006年の高値(119.88円)からは約31%の円高水準となっている。他方、シカゴ商品取引所によると、穀物(米、大豆、小麦、とうもろこし)の国際価格は、2006年秋との比較で1.7―2.9倍も跳ね上がっている。 

 <経済のフラット化とグローバル・インフレ>  
 今後の商品市況について、マーケットストラテジィの亀井氏は「穀物や食料品は今後も上がり続けるだろう。異常気象の影響もあるが、新興国の生活水準の向上が最も大きな要因だ」という。新興国の生活水準が急ピッチで向上し、先進国に近づくことは「世界経済のフラット化」と表現されるが、フラット化はインフレ圧力の増幅と無関係ではない。 
 「目下、世界経済が直面する問題は簡単な算数式で説明できる」と東海東京証券のチーフエコノミスト、斎藤満氏は言う。「世界経済のフラット化」+「量的緩和」=「グローバル・インフレーション」がその数式だ。 
 量的緩和以前の世界経済においては、コスト安で所得が低く、効率的な生産が可能なインド、中国、インドネシアなど新興国に資本が集中してインフレが進行した。一方、先進国では、資本流出で雇用も十分に創出できず、デフレ傾向が顕著となったが「グローバルにみれば、中庸な地点に世界経済は落ち着いていた」と斎藤氏は分析する。
 「しかし、日米両国がデフレ回避ために物価を底上げするリフレ政策に乗り出したことで、新興国への資本流入は一段と加速し、世界経済のバランスはインフレサイドに振れている。このため、世界的に物価が上がり、金利も上昇してきた」と斎藤氏は言う。
 世界銀行の調べでは、新興・途上国への民間資金の純流入額は2010年に前年比44%増の7532億ドルとなった。 

 <コア・インフレは時代遅れ>
 インフレを捉える指標として、消費者の生活感覚に最も近いのは、消費者物価指数(CPI)のなかでも、食料やエネルギーを除いた「コアCPI(コア・インフレ率)」ではなく、それらを除かない「CPI総合指数」だ。しかし、日本では、利上げによる国債利払い費の負担増を嫌う官僚をはじめ、コアCPI(除く生鮮食品)にこだわる向きが多く、米国でも官僚やエコノミストの多くがコアCPI(エネルギー、食料を除く)に注目する。  
 しかし、欧州では「政策担当者がコア・インフレ率のみに目を奪われると、全体の物価上昇圧力を低めに見積もることになりかねない。商品価格の上昇が構造的変化を映したものであるならば、コア・インフレ率だけ見ても意味がない」(欧州中央銀行のビーニ・スマギ専務理事)との意見が聞かれる。
また、ECBのトリシェ総裁は「米連邦準備理事会(FRB)はコア・インフレ率が将来の消費者物価を予想するうえで適切な指標だとみているが、われわれはそれが必ずしも適切な指標ではないと考えている」との見解を明らかにするなど、既に政策判断の軸足を総合指数に移している。  
 日本の11月の全国消費者物価指数(CPI)は、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除くと、前年同月比0.9%の下落でデフレだが、全体の物価(総合指数)では、10月から既にプラスの領域に入っている。さらに、CPIの先行指標といえる国内企業物価は、過去3カ月間、前年比で着実に上げ幅を拡大している。
 日銀は25日、昨年10月末に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の中間評価を発表し、政策委員が予測する2011年度の消費者物価指数(除く生鮮食品:コアCPI)の大勢見通しの中央値をプラス0.3%とし、10月時点の同プラス0.1%から上方修正した。
 日銀が出口政策に向かって舵とりを始めるのは、コアCPIが1%を上回る環境とみられており、「来年度中の利上げはない」(外銀エコノミスト)との見方が多い。 

 <QE2を続ける理由>
 他方、リフレ政策の急先鋒であるFRBは、デフレリスクを強調しながら量的緩和第2弾(QE2)を進めているが、インフレがじわりと進行するなか、同政策は深刻な矛盾を露呈してきた。
 25―26日のFOMCでは、6000億ドルの長期国債を購入するというバーナンキ議長のプランが堅持されるとみられているが、18日付のウォールストリート・ジャーナルによれば、FRB内部では、「現政策について理路整然と国民に説明する方法を見つけるのに苦労している」という。 
 米コアCPI(エネルギー、食料を除く)は12月も前年比0.8%の上昇となり2%弱の目標を下回ったが、CPI総合指数では最近半年では年率3%、最近3カ月では年率3.2%とインフレは加速している。
FRBがQE2に固執する理由は、表向きの景気回復の一方で、金融機関の不良債権処理が進捗せず、依然深刻な不良債権を抱える金融機関に収益機会を提供するためとの意見が聞かれる。
 「ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)など片付いていないGSE問題とそれらの債券を抱える金融機関のために、FRBには長期金利上昇を阻止するという強い意志があり、QE2は当分やめられないだろう」と亀井氏は言う。FRBは有価証券の保有を1銘柄につき総資産の35%以内に抑えるというルールを一時棚上げまでして国債の買い取りを継続している、と亀井氏は続けた。

(ロイター 森佳子記者、編集 内田慎一)
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