ロイターコラム:特別会計改革、民主党にやる気はあるのか(REUTERSから引用)

引用記事中に一般会計と特別会計を合わせた国家予算207兆円とあるが、ということは、国民の代表である国会議員の決を採らずに、半分以上の予算を官僚が決めているという、とても議院内閣制の国とは思えない行政実務が実態として続いているということ。
こりゃ、多少は混乱してもいい、予算は必ず国会を通してから決めるようにして欲しい。

引用開始
田巻 一彦 ロイターコラムニスト 
 [東京 6日 ロイター] 次の首相の座を争う民主党代表選の行方は、菅直人首相と小沢一郎・前民主党幹事長のどちらが勝利するのか予断を許さない情勢だが、マーケットが注目する財源をめぐる議論は、あいまいなままで推移している。
 特に民主党が昨年の総選挙でマニフェストに明記した特別会計の見直しに関し、両候補から具体的なアイデアが出ていない。このまま推移すれば、2010年度予算編成と同様に2011年度予算編成でも、多大な無駄が存在すると言われている特別会計の改革には全く手がつかない可能性が高まる。昨年の総選挙で、行政の無駄排除に期待して民主党に投票した有権者も多かったはず。14日の投開票日までに2人の候補者は、特会改革の行方について明快に説明する義務がある。
 4、5日の週末に菅首相と小沢氏の間で意見が激突したのは、補助金の「一括交付金化」だ。国が自治体にあれこれと使い道を指定する現行の補助金システムをあらため、使い道を自治体に委ねる「一括交付金」の方式を小沢氏が主張。菅首相は、すでに国民健康保険など使い道が固定されている部分が多く、強引に進めると福祉の切り捨てにつながりかねないと反論した。一部のメディアは「一括交付金」が大きな争点になってきたと指摘していたが、財政赤字マニフェストの実行で揺れる民主党の政策スタンスにおいて、最も重要なポイントは特会改革だろう。
 菅首相が1日に発表した政策では「事業仕分け特別会計に広げる」としたが、具体的な進め方には触れていない。小沢氏の発表した政策では「(一般会計と特別会計を合わせた)国家予算207兆円の全面組み替えを断行」と主張しているが、こちらも具体的な取り組み方法は不明だ。一方で、小沢氏は約600兆円の国有財産のうち約200兆円を証券化して財源化するアイデアについて、関心を持っていることを明らかにしている。この証券化のスキームに対し、一部のエコノミストは、2011年度予算編成で有力な財源になりうるとし、新規国債発行額を抑制するツールになるとの見解を示している。ただ、国有財産の証券化と特会改革が、どのように関連していくことになるのかははっきりしない。
 もし、特会改革に手を付けず、小沢氏が提唱するマニフェストで示した政策の実現を図ると、2010年度予算で発行した44兆円の新規国債発行額をさらに5兆円以上、上回る規模で発行せざるを得なくなる。言い換えれば、マニフェストで示された政策の修正を目指す菅首相と、原点回帰を主張する小沢氏の対立は、特会改革に手を付けないということであれば「財務省型の国債発行管理」と「国債発行の大幅増」という図式になる。総選挙で民主党に投票した有権者からみれば、不毛の対立構図に映るのではないか。
 2010年度の予算編成をみて、マーケットの債券ストラテジストの多くは、一足先に「特会改革」は絵に描いた餅と断定し、小沢氏が勝利した場合は、国債の大幅な増発は不可避と判断している。大幅な特別会計の見直しは、特会を所管する各省庁の抵抗が強い上に、特会の見直しには法律改正が不可欠で、2011年度予算の政府案をまとめるメドである2010年12月末までに、法律改正を果たすことが現下のねじれ国会では、かなり難しいという事情があるためだ。
 だが、民主党政権が生き残るには「特会改革が不可欠」と菅首相や小沢氏が決断し、大胆な改革に踏み出す方針を示すことになると、国債市場は、将来の大幅な需給変動要因を織り込まざるを得なくなる。今は無視されている特会改革もいったん動き出せば、マーケットにとって大きな存在として浮上してくるだろう。
 「特会改革」が14日に向けて、大きな争点となって具体的な論争が展開されれば、停滞したこの国の成長力にも、再び、活力が注入されるきっかけができる。それは単に赤字国債の発行額の増減にとどまらず、まるで糸がからまりあったセーターのような統治機構の一角に大ナタをふるう力が、この国にまだあることを示すことになるからだ。 

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