焦点:緩やかな円高進行では口先介入、市場急変なら追加緩和も(REUTERSから引用)

この雰囲気だと、年内に1ドル70円台突入もありえるか。

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[東京 5日 ロイター] 円高・株安が進行するなかで、政府・日銀は急激な市場変動が日本経済に悪影響を及ぼす可能性が高まる場合には対応を辞さない姿勢だが、不安定な政治情勢もあって、現状のように緩やかに円高が進行する局面では、口先介入による市場けん制にとどまる公算が大きい。
 一方で、市場が大きく変動した場合には、金融政策に対する期待感の高まりを背景に日銀が追加緩和に踏み切る可能性がある。
  <野田財務相円高けん制トーン強める、介入には懐疑的>
 外国為替市場では4日、ドル/円が一時、8カ月ぶりとなる85円前半に下落。こうした円高の進行を嫌気して日経平均株価が下落した。長期金利も一時7年ぶりの1%割れとなるなど、米国を中心とした世界経済の減速懸念などを背景に、市場は不安定さを増しつつある。
 株安に拍車をかけている円高の進行について野田佳彦財務相は4日夕、「足元の動きはやや一方的だと思う」と述べ、これまで繰り返してきた「為替は市場が決める」との原則論を封印し、足元の市場動向に言及した。市場には当局による円売り介入への警戒感も根強く、今後も政府は円高の進行度合いに応じてけん制トーンを強めると見られるが、実際に為替市場で円売り介入に踏み切る可能性については懐疑的な見方が少なくない。
 ドル/円相場は今年5月からほぼ一方向にジリジリと下落を続けているが、現段階では、日本経済のけん引役である輸出企業の収益への影響が顕在化していないこともあり、警戒感を示しつつも当局に切迫感は見られない。そもそも為替介入自体についても、景気減速懸念が強まっている欧米が外需拡大政策に傾斜するなか、日本単独にならざるを得ず、「効果は乏しい」(政府関係者)との指摘が少なくない。ある日銀OBは「中国に介入するなと言っておきながら日本だけが介入するのは難しい。米欧ともに事実上の通貨安政策で輸出・多国籍企業が高収益を享受しており、円高阻止で協調介入は無理」と言い切る。緩やかに円高が進行する局面では、市場参加者のポジションの傾きが小さいなどテクニカル要因で介入効果を疑問視する声もある。
  <「ねじれ国会」が足かせの見方>
 さらに、先の参院選での民主党敗北で不安定化した政治情勢が、政策発動の制約要因になりかねないとの見方もある。ある民主党議員は「ねじれ国会」を政策単位の部分連合で乗り切るしかない菅政権としては、野党のさまざまな主張に配慮する必要があると指摘。連携を模索する「みんなの党」は「為替に限らず市場への介入自体に否定的。今後の国会運営を考えた場合、政策の実行も慎重になりやすい」との見方を示す。また、円売り介入によって、すでに債務超過状態にある外貨準備を積み増し、効果が出なかった場合には、野党の批判を浴び、2011年度予算編成作業に悪影響が出るとの声もある。
<高まりやすい金融緩和期待、9月政変にらみも>
 こうした中で、必然的に日銀の金融政策への期待感が高まりやすいが、日銀は、現在の円高について「日本よりも潜在成長力の高い米国は、日本より先に出口戦略を取る。長期的には円安・ドル高トレンド」(日銀幹部)との立場。「欧米と比較すると相対的に日本経済が堅調なのも背景にある」(同幹部)として、現在の為替水準がファンダメンタルズを反映しているとの解釈もある。政府内からも「追加緩和を実施して短期的なインパクトを市場に与えたとしても、トレンドまで変えることができるのか」と緩和効果を疑問視する声が聞かれる。
 ただ、一部の日銀幹部は、「為替が動いても『何もやりません』と思われるのは語弊がある」と語る。日銀内では、円高阻止を目的としても追加緩和の余地はない、と断言する向きもあるが、日銀当座預金残高を参照して為替水準を展望する海外投資家がいるのも事実。こうした点を踏まえ、日銀内では市場が大きく不安定化した場合の追加緩和について「量的緩和とは呼ばずに、量的なニュアンスを出すしかない」(別の日銀幹部)との指摘も出ている。
 もっとも、9月の民主党代表選の結果によっては政策の方向性が変化する可能性も否定できない。「政権がどうなるかで政策がどう実現されるかも変わってくる」(別の政府関係者)との思惑もあり、不安定な政治情勢を背景に金融政策を含めた政策対応が後手に回る懸念がある。
 (ロイターニュース 伊藤 純夫記者 竹本能文記者:編集 石田仁志)
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