協議継続で一致、オバマ大統領の訪中を要請―米中首脳会談 (WSJ日本版から引用)

しばらくは、米中微温湯戦なのだろうか。

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オバマ米大統領と中国の習近平国家主席は8日、2日間にわたる初の首脳会議を終え、北朝鮮問題や気候変動などで共通の地盤を見出し、今後も一致できなかった問題について協議を続ける方針を示した。2日間にわたる会談の後で、両国政府関係者が明らかにした。

 会談の議題はサイバー・セキュリティー北朝鮮、人権、経済関係など多岐にわたったが、両首脳はこの会談を利用して、数多くの問題について大枠を議論し、将来の問題解決に向けた道筋を描くことを目指していた 。

 首脳会談は8日午前に終了した。7日は数時間の会談のあと夕食会も催された。

 米中首脳は8日午前、報道陣の前にそろって姿を現し、会談の会場となったカリフォルニア州サニーランズにある邸宅の庭園を散策した。2人は通訳だけを伴い、歩きながら言葉を交わした。途中、オバマ大統領は足を止め、報道陣に向かって「素晴らしい」会談だったと感想を述べた。

 米中両首脳は8日午前の大半をともに過ごした。会談を終えると、彭麗媛・習主席夫人と駐米中国大使夫人を交えてお茶を楽しんだ。ミシェル・オバマ大統領夫人はワシントンに残り、首脳会談には出席しなかった。

 ホワイトハウスによると、習主席は正午ごろ邸宅を出発した。

 会談は形式張らない雰囲気の中で行われたが、これは具体的な合意を目指すより、信頼関係を醸成するほうが重要だと判断した米中両国の政府関係者が念入りに議論して実現した。両首脳は8日、ネクタイと上着を着用せず、襟元のボタンをはずしたシャツとズボンという姿で会談の場に到着した。


 7日の会談では、両首脳はサイバー・セキュリティー問題での協力と軍当局間の関係改善で概ね一致した。

 オバマ大統領は7日、ワーキングディナー前に記者会見を行い、研究や起業活動に対する中国経済の依存度は高まっていると指摘、中国もサイバー・セキュリティーに関して米国と同様の懸念を抱えるだろうとの見方を示した。オバマ大統領は「だからこそ、われわれはこの問題について互いに誤解を避け、協力できると思う」と述べた。

 習主席は「誠実に協力することで、われわれは不安を取り除き、情報の安全保障やサイバー・セキュリティーで前向きに協力できる」と述べた。

 米中両国の政府関係者は形式にとらわれない首脳会議を開催することで、首脳同士が個人的な信頼関係を築き、衝突に発展しかねないともいわれている両国関係の悪化を食い止めるだけの時間を確保し、ムードを醸成することを期待していた。

 オバマ大統領が習主席と会談するのは、習主席が昨年、副主席として訪米したとき以来だ。大統領にとっては、今回の首脳会議は今後10年にわたって中国の舵取りを担う習主席をよく知る機会だ。しかし、米政権は中国との間に経済や安全保障に関する問題も抱えている。米国はその多くをめぐって長年、中国と対立、不本意な結末に終わったこともあった。中国によるサイバー技術を利用したスパイ活動や、北朝鮮の核開発、アジアにおける中国の領海紛争、中国の市場改革などがそうだ。

 一方、習主席は米中関係を対等な立場の大国間の関係として再定義するという提案を抱いて米国にやって来た。習主席は19世紀のアヘン戦争まで中国が世界の中で確立していた地位を取り戻すという「中国夢(チャイナ・ドリーム)」の実現を目指しており、その一環として米国との対等な関係を築きたいと考えていた。

 初日の会談前に、両首脳は40度を超える暑さの中、邸宅の庭を歩き、報道陣のカメラの前で握手した。2人とも襟元のボタンをはずした白いワイシャツ姿で、ネクタイは着用していなかった。両首脳は短く、両国関係における新たな時代の必要性を訴えたが、オバマ大統領は習主席が提案した対等な大国という図式に賛意を示すには至らなかった。

 記者会見では、サイバー・セキュリティーの問題に大半の時間が割かれた。直前に、米国ではオバマ政権が電子メールなどのデータを監視していることが明らかになっていた。

 中国が米国に対しサイバー攻撃を仕掛けているという報道や米政権の裁判所の許可を得た監視プログラムについては相互の主張が食い違った。

オバマ大統領は「技術の驚くべき進歩によって、サイバー・セキュリティーの問題や、サイバー・セキュリティーに対するルールや共通の取り組みの必要性が2国間関係、多国間関係の中でますます重要になっていくと習主席と私は認識している」と述べた。

 オバマ大統領はさらに、サイバー・セキュリティーに関する問題は未知の領域であるとして、軍事問題などの交渉に適用されているようなルールが存在しないと指摘した。

 大統領はハッキングやサイバー空間での窃盗といった活動と、国家安全保障局が行っていた監視活動は異なるとの説明に努めた。また、サイバー・セキュリティーの問題は米中だけの問題ではなく、また非国家的組織が関与していることが多いと指摘した。

 その上で、同大統領は「他国とも共通ルールの策定で交渉しながら、民間、公的両部門の防衛と保護のシステム構築に懸命に取り組まねばならない」と述べた。

 習主席は、首脳会談の数日間にサイバー・セキュリティー問題に関する報道が急に増えたことに気づいたと述べた。

 習主席はこうした報道が「サイバー・セキュリティーの脅威が主に中国に由来するとか、サイバー・セキュリティーが米中関係で最大の問題だという印象を与えるかもしれない」と述べた。さらに、「新しい技術の活用は両刃の剣だ。一方では進歩を後押しするが、他方では、規制当局にとって問題となるかもしれず、国家や企業、社会、個人の権利を侵害するかもしれない」と述べた。

 習主席は中国もサイバー・セキュリティー問題を懸念しており、ハッカー攻撃の被害者でもあるという従来の見解を繰り返した。

 習主席は貿易と環境での協力に加え、軍当局間の関係改善を行うべきだと述べた。また、オバマ大統領と今後も緊密な意思疎通を行いたいとし、「適切なタイミングで」中国で首脳会議を開催したいと述べた。

 オバマ大統領は米中両国が軍当局間の協議の「制度化、定期化」に取り組むと述べた。軍当局間の協議はこれまで中断されることが多く、米中が定期的に開催している戦略・経済対話にも正式に組み込まれているわけではない。

 習主席はまた、「過去には大国がやむを得ず対立したり衝突したりすることがあったが、中国と米国はそれとは異なる新たな道を見つけなければならない」して、「つまり、両国は大国間の関係の新しいモデルを築くよう協力しなければならない」と述べた。

 首脳会議に先立って、中国政府はお土産を用意していたようだ。昨年、北京の米国大使館に駆け込み、のちに渡米した盲目の人権活動家、陳光誠氏の兄の陳光福氏は7日、中国当局が自身と母親に対して旅券を発給したことを明らかにした。
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