国債暴落なら金融システムは混乱、日銀買い支えも−武藤前副総裁 (Bloomberg.co.jpから引用)

3月から4月くらいまでは今の株高路線が続くかもしれないが、桜の散るころから先は、政局に合わせて、混乱する可能性もある。それで円安株安方向となったとしても、しばらくして円安株高に切り替わる可能性もある。あとは、国外の事案がどう影響するのか。

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2月22日(ブルームバーグ):大和総研武藤敏郎理事長(日本銀行前副総裁)は21日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、日本の財政健全化に関連して、「仮に国債価格が何らかの要因で暴落すれば、間違いなく日本の金融システムは混乱する」と述べた上で、日銀が「中央銀行として、その時は買い支えるというのは1つの選択肢だ」との見方を示した。

  巨額の財政赤字にかかわらず長期金利は1%を下回っており、政府は低利での国債発行が可能となっている。武藤氏は「個人金融資産が1500兆円あるので消化能力があると言われるが、増加額ベースでは既に国債増加額が上回っている」と指摘。「巨額な国債発行に持続性があるかというと、ないというのが常識的な答えだろう」という。

  企業の投資意欲が低く資金需要がないため、金融機関は預金の運用先がなく国債を買わざるを得ない。そのため、「この2、3年は国債の消化は十分可能であり、国債の暴落が近未来に起こるとは見ていない」ものの、「何かのトリガー(引き金)をきっかけに状況が一変するリスクはあると思わなければならない」と語る。

  その上で、国債相場が暴落すれば「金融システム不安が起こる可能性がある」と指摘。日銀に対して「暴落を何とか食い止めよ、ということになるだろう。好むと好まざるにかかわらず、やらざるを得ないことになるのではないか」と話す。武藤氏は2003年1月に財務省次官を退任後、同年3月から08年3月まで日銀副総裁を務めた。

         日銀の物価目標「画期的」

  武藤氏は日銀の14日の決定について「高く評価したい」と表明。「消費者物価指数(CPI)前年比2%以下のプラス、当面1%を目標とし、それに向けて政策運営を行うと表明したことはかなり画期的だ」と述べた。1%では低いとの声もあるが、「当面1%というステップを踏むことはそれほど不自然なことではない。日銀はまずは1%を目指し、その先の目標は2%ということは示唆している」という。

  日銀は同日開いた金融政策決定会合で、当面、CPI前年比上昇率1%を目指すとした上で、「それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」と表明。デフレ克服に向けた姿勢を明確に示すために、資産買い入れ等基金を「55兆円」から「65兆円」に拡大することを全員一致で決定し、追加緩和に踏み切った。

  日銀が同基金の増額分をすべて長期国債としたことについては「日銀が国債を買い増す措置は適切だ。バランスシートを増やす時に、国債以外で増やすという政策が現実的かというと、それはそうではない。国債が圧倒的にシェアの大きな金融資産なので、国債を購入するのは良いと思う」と語る。

          ゼロ金利解除は「相当先」

  1980年代後半以降でCPIが1%以上に上昇したのは、バブル時代や97年の消費税率引き上げ時、08年の原油価格高騰時の3回のみ。武藤氏は「大和総研は12年度がマイナス0.3%、13年度がプラス0.1%とみている。1%にはまだ先が長い。14年度も消費税率引き上げ分を除けば、1%の達成はなかなか難しいのではないか」と指摘。その上で、「そうなると政策変更のタイミングは相当先に延びる」と話す。

  日銀は1%の物価上昇を目指して政策運営を行うとしており、目標達成まで何度も追加緩和を迫られる可能性がある。武藤氏は「全体として少しずつ進んでいるということであればよいが、なかなかそれが目に見えない時は不満が出てくるかもしれないので、展開次第では、日銀にとっては大きな負担になる可能性がある」と語る。

  消費税率引き上げに対する反対論は根強い。「市場は日本の財政の改善余地があると見ており、財政再建にかける努力を見守っている状態だ」と指摘。「消費税率引き上げ法案は国会提出までは可能だと思うが、仮に何らかの理由で成立しなかった時、国債の格下げは不可避だし、その結果、市場では若干の緊張が走るだろう」と話す。

         デフォルトの淵に立つ前に

  武藤氏は「12年度くらいまでは復興需要に支えられ、1%台後半の成長は可能というのが大方の見方だろう。問題はそこから先で、13、14年度は12年度より若干低下していく可能性が高い」と指摘。「経済停滞に近い状態で、雇用などいろいろな問題が大きな政治課題になる」として、財政健全化へ向け「あまり時間的なゆとりはない」と語る。

  武藤氏は「ギリシャポルトガルはマイナス成長の中で増税しており、フランスやイタリアも増税を計画している。イタリアはマイナス成長だし、フランスも日本より成長率は低いが、財政赤字の悪影響が差し迫ってくると、経済にとって良いか悪いかという判断より、増税しないとデフォルト(債務不履行)の淵に立ってしまう。日本はそうなる前に賢明な判断をすべきだ」としている。

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更新日時: 2012/02/22 15:09 JST
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