焦点:政治的対立隠したEU首脳会議、水面下では亀裂拡大(REUTERSから引用)

イギリスはチェコを使い、ドイツ主導のEUに亀裂を入れるのか。

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ブリュッセル 30日 ロイター] 30日開催された欧州連合(EU)首脳会議では各国首脳がお互いに笑顔や握手を交わし、債務危機対応に追われた昨年12月の前回会合のような刺々しさは感じられなかった。だが、水面下では、表面的な笑顔では覆い隠せないほど深刻な政治的溝が広がっているようだ。

今回は首脳会合に先立ち、メルケル独首相、サルコジ仏大統領、モンティ伊首相が「個人的」に30分会談。その後、3首脳はジョークを飛ばしながら肩を並べて首脳会合が開催される部屋に向かった。

英国のキャメロン首相もテレビカメラの前でわざわざサルコジ仏大統領に歩み寄り、握手を交わした。昨年12月9日に行われた前回の首脳会議で、新たな財政協定をめぐる英仏の見解の相違からサルコジ大統領とキャメロン首相が激しく対立した記憶を払拭しようとしたに違いない。

しかし、両首脳の「和解」は持続しなかった。サルコジ大統領とキャメロン首相の食い違いはすぐに表面化。スペインなど一部の国は、緊縮策が過度に重要視されることに懸念を表明した。ポーランドをはじめとする一部の東欧諸国は、債務に関する厳しいルールを定めた新財政協定に参加するにもかかわらずユーロ圏首脳会議に出席できないことに、強い不満を示した。

サルコジ仏大統領とキャメロン英首相は個別に開いた記者会見でお互いをファーストネームで呼び合い、両者の間に緊張や不一致があるとの見方を否定しようと努めた。

だが、財政規律の強化を求める新たな財政協定から金融取引税の導入問題、EUの特許や産業政策に至るまで、英国とフランスはあらゆる問題で対立している。実際、英国はチェコとともに、新財政協定の受け入れを拒否した。

キャメロン首相は記者団に対し「自分はサルコジ大統領の支持者であり、友人だ。彼は時々、私が同意できないことを言う。きょう、彼は英国には十分な産業がないと言ったが、実際は英国の産業セクターはフランスより大規模だ。しかし、われわれはそんなことを気にしない」と語った。

サルコジ大統領もキャメロン首相との不和を否定しながらも、英国の産業に関する発言について「私は誰も怒らせたくないし、誰をも不安にさせたくない。誰かを挑発したつもりはない」とコメント。その上で「私は、われわれの友人である英国が特に金融サービスを中心とするサービスセクターを優遇する道を選んだことを指摘したかっただけだ。それは、彼らがやはりわれわれの友人である米国と歴史的なつながりがあることを反映した尊重すべき選択だ」と述べた。
ポーランドとの対立>

緊張関係が高まっているのは英仏だけではない。ユーロ圏のメンバーではないがユーロ圏への参加の意向を表明している国に対してユーロ圏首脳会合への出席を認めるべきだと主張するポーランドとの間でも、フランスは対立している。

外交筋によると、ポーランドハンガリーチェコスロバキアがそうした措置を要求しているのに対し、フランスは当初、断固として拒否する姿勢を示していたが、その後、毎年一部のユーロ圏首脳会議に非ユーロ圏諸国の参加も認める方向で妥協が成立した。

最近のEU首脳会議では、債務危機の深刻化を受けて支出削減策に議論の焦点が当てられてきたが、今回は、雇用や成長促進策に重点をシフトする方針だった。

しかし、すべての首脳が雇用や成長を促す必要性について合意しても、その目的を達成する最善の方法については依然として見解が一致していない。

欧州の救済ファンドに最大の貢献をしているドイツは、各国に対して強硬に財政赤字の削減と構造改革の遂行を要求。一方、スペインは、経済がマイナス成長に陥る中で財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を現在の8%から4.4%に引き下げるという目標はほとんど達成不可能だ、と悲鳴を上げている。

スペインのラホイ首相は、首脳会合前に就任後初の記者会見を行い、スペインは2012年の成長目標を達成できない見通しだと表明。それが財政赤字削減に与える影響については明確な見通しを示さなかった。

一方、欧州委員会バローゾ委員長は同じ記者会見で、スペインの困難な状況を認識しているとして、2月12―13日に予定されている次の財務相会合でスペインの問題について議論すると明らかにした。

ラホイ首相は首脳会議の場で、他国の首脳から支出削減や構造改革に向けた厳しいアプローチを称賛されたものの、スペインのメディアによると、ラホイ首相は労働市場の改革に対して祝意を示したフィンランド首相に対し、「ありがとう。しかし、その結果がゼネストだ」と答えた。

(Luke Baker記者;翻訳 長谷部正敬)
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