世代間賦課から世代内扶助へ=経営共創基盤CEO・冨山和彦(毎日jpから引用)

年金の支給開始年齢を70歳にし、支給額も現在の半分程度にすれば、赤字国債の発行はずいぶん防げる。
年寄りに年金でごちそうされるよりも、働く世代が稼いだお金で年寄りにご馳走するほうが健全だ。
あとは貧困対策は必ず実労を伴うように考えればなお健全だ。

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税と社会保障の一体改革の議論が、消費税増税問題を中心に盛り上がっている。ここまで国家財政リスクが大きくなると、基礎的財政収支の赤字が縮小に向かってくれないことには、民間の投資も消費も上向かない。

 将来世代への借金つけ回しや増税に頼って「安心・安全の社会保障」と言われても、まったく説得力はない。巨大な赤字と借金を減らすには、増税とともに社会保障給付の抑制に切り込まなければ、国民の不安感、特に若年層の不安感は高まるばかりだ。

 実は現在の「上の世代」内には、大変な所得と保有資産の格差がある。その上、この世代の年金制度は、生涯所得の多い人がより多くの年金を受け取る構造になっており、所得再分配機能も生活保障機能も弱い。

 そもそも年金や医療などの社会保険は、一定の確率で起きる不運による耐え難い困窮に対する「保険」である。年金保険とは、想定より長生きし、かつ所得も資産もなくなり、生活に困窮するリスクに対する保険なのだ。今の年金や医療には、この原理を逸脱した過剰給付がかなりある。

 消費税には逆進性があり特に消費世代である若年層にとっては、いわゆる世代間格差を緩和する機能は乏しい。やはり同じ世代内での相互扶助、余裕のある高齢者の負担増と給付減に思い切って手を付けるべきなのだ。

 私はカネボウ日本航空の再建で、同じ構造問題を抱えた企業年金の改革に取り組んだ。もちろん上の世代からの激しい反発、抵抗にもあった。しかし、日本人は共助の民である。最後の最後は、後輩や、子どもや、孫の世代のために自らの身を削ることに同意してくれた。政治家も勇気をもって、世代間賦課から世代内扶助への転換に挑戦してほしい。

毎日新聞 2012年1月25日 東京朝刊
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