行き詰まる米赤字削減議論―ブッシュ減税維持を巡り対立(WSJ日本版から引用)

アメリカ議会でドル安政策が実演中。

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合意期限を数日後に控えて、米財政赤字をめぐる超党派特別委員会が行き詰まりを見せている。そのなかで特に解決が困難な問題は、「ブッシュ前大統領時代の減税をどうするか」だ。

 共和党は、現在の税率を延長しないような合意には反対する体制を固めている。税率は2012年末までの期限付きだ。

 民主党は低・中所得者においてのみ税率を維持したいとし、課税所得が年間25万ドル(約1950万円)を超える世帯に対しては高い税率を要求している。23日の期限までに合意に達するためには、この問題を解決しなければならない。

少なくとも公式には、委員会のメンバーは合意は可能だとしている。だが、行き詰まりへの懸念が新たになり、欧州債務危機への不安もあって、米国株は17日午後に急落し、議会が赤字を削減できないことから生じる金融・経済リスクが浮き彫りになった。米国債はすでに、財政赤字問題の行き詰まりが一因となり、今年8月に最上級の格付けを失っている。

 特別委員会が10年間で少なくとも1兆2000億ドルの赤字削減に合意しない場合、2013年から自動的な支出削減が行われる。ブッシュ前大統領の減税をすべて延長した場合、今後10年間で3兆7000億ドルの赤字増加要因となる。

 ベイナー下院議長(共和党)は民主党が妥協を拒んでいることに落胆した様子で、「ずっと、イエスと言ってもらえない」と述べた。

 特別委員会の共同委員長を務めるパティ・マリー氏(民主党)は、共和党が税金に関して合意できるならば、「前に進むことができる」と述べた。

 共和党はパット・トーミー議員による赤字削減計画を支持している。その計画は、高所得者の課税控除を制限することなどで2500億ドルを捻出し、一方で税率を恒久的にブッシュ前大統領時代の水準よりも低くするというものだ。

 一部の民主党員は、高所得者の税率引き上げ要求を取り下げようとし、最高税率を現在の35%以上にしないことを求めた。これが、リベラル派を怒らせた。

 ナンシー・ペロシ下院議長は、「ブッシュ前大統領の減税を延長し、メディケア(高齢者向け医療保険)を撤回するというならば、それはバランスを欠いており、支持することはできない」と述べた。

 この問題は議会を何年にもわたり悩ませてきた。全面的な減税を決めたこの法律は2001年に成立し、そのときの期限は2010年末だった。昨年オバマ大統領が署名し、期限は2012年まで延長された。

 オバマ大統領と大半の民主党員は、高所得者の税率引き上げに向けて熱心に動いてきた。これを実現すれば、赤字増要因は今後10年間で8000億ドル減少する。民主党はこれを税の公平の問題と、メディケア削減の圧力を減らす方法として考えている。

 民主党は自党が有利だと考えている。というのは、議会が行き詰まれば、ブッシュ前大統領の減税は来年末で期限切れとなるからだ。こうなれば、保守派よりもリベラル派にとってより好ましい結果となる。共和党はこの問題を予算交渉の一部として扱いたいという強い意向を持っている。

記者: Janet Hook and Naftali Bendavid
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