日本に回帰するマネー、介入後に米債ポジション解消の売りも(REUTERSから引用)

円高、そしてデフレはまだ続く、ということか。円高は日本の国民の利益に適う。

引用開始
[東京 18日 ロイター] 東日本大震災を受け、いったんは日本国外に押し出されたマネーが踵(きびす)を返して日本に還流している。欧州ソブリン危機や金融機関の信用問題、米国債の格下げ等の不安材料を背景に、本邦投資家による外債処分が止まらない一方、アジアの中銀は円の短期債投資を活発化させている。   

 財務省が18日に発表した対外・対内証券投資データによると、日本人投資家は8月第2週に海外の中長期債を3505億円売り越した。売却対象は「米国債が中心」(市場筋)。米国債が格下げされた8月第1週と合わせて8月前半の外債売り越し規模は6700億円に達する。売りの主体は邦銀とみられるが、生命保険会社など機関投資家による外債投資も低調だ。  

 <ドル安と座標軸の消失> 

 「生保の対外投資損益のほとんどは為替から来ている。円高リスクがある限り、外債投資を手控えざるを得ない」と富国生命投資顧問・代表取締役社長の櫻井祐記氏は語る。

 ドル安について同氏は「冷戦後、米国の地位低下が顕著となり、基軸通貨国というよりは、西側の大国の1つに成り下がったという現実が大きい」との見方を示した。「米国内では大統領のリーダーシップが低下し、安全保障やG7の枠組みにおいても、米国主導で物事が決まらなくなっている」とし、「米国が作った格付けルールの中で、米国自身が格下げされ、座標軸の真ん中が無くなった」と同氏は指摘する。  

 中国の格付け会社、大公国際資信評価のGuan Jianzhong董事長は、米スタンダード&プアーズ(S&P)による米国債格下げを受けて、金融市場が長期的な混乱に陥る可能性があるとの考えを示した。大公国際はS&Pに先立ち今月初旬に米国の信用格付けをシングルAプラスから、シングルAに引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。

 「ユーロが弱いうちはドル安に一定の歯止めが掛かるだろう。しかし、基軸国からワン・オブ・ゼムに成り下がった米国の債券が、突然の売りを浴びることも、これからはあるだろう」と櫻井氏は予想する。  

 本邦銀行部門は3月に2.1兆円の海外中長期債を買い越した後、新年度入りしてから4カ月連続で売り越し、4─7月は累計で4.3兆円の外債ポジションを解消(売り越し)した。前年同期は5.3兆の買い越しだった。
「今年2月に10年米国債利回りは3.7%で(価格は)割安感があった。ここへきて2%付近まで低下したので売り抜けたことと、米国債格下げ後のドル調達難からポジションを解消せざるを得なくなった面もあるだろう」と三井住友銀行・市場営業推進部チーフストラテジストの宇野大介氏は言う。

 「今後は、米国債のさらなる格下げリスクと、中国その他の米国債保有国がポジションを圧縮した場合に、米銀がどこまで肩代わりできるのか不透明で参入しづらい環境が続く」と同氏は語る。

  <介入と日本の短期債人気>

  米国債が「売りを浴びる」リスクにさらされる一方、財務省が過去最大となる4.5兆円規模のドル買い/円売り介入を実施した翌週に日本の短期債は海外勢による「突然の買い」を浴びた。

 海外勢は8月第2週に2.98兆円の本邦短期債を買い越した。現行統計が開始された2005年1月以来、週次の買い越し額としては過去最高となった。市場では、対象となった短期債はほぼ「国庫短期証券(TB)」で、主体となった海外勢は「中国を中心とするアジア中銀」との見方が有力だ。

 アジア中銀が超低金利の円債を買い進めた理由の一つは介入だ。

 大規模円売り介入は、短期市場で一時的に円資金の大幅余剰を引き起こし、ドル/円金利差を押し広げ、ドルの調達コストを押し上げた。そこに、欧米金融株の急落や一部の欧州金融機関が信用リスクからドル調達の際に上乗せ金利を要求される事態が重なり、ドルのプレミアムが拡大した。

 ドル資金が豊富な中国など巨大外貨準備の保有国にとっては、ドル運用の絶好の機会が到来した。為替スワップを通じてドルを供給し、円を調達し、その円を主にTBで運用したものと見られる。
円資産回帰する本邦資本や海外勢の円債投資を反映して、長期金利の指標となる10年債利回りは、今月9日に続きこの日も1%を割り込んだ。  

 一方、ドル・プレミアムの拡大は、短期のドル調達で米国債のロング・ポジションをファイナンスする邦銀にとっては厳しい。

 「邦銀が8月上旬におよそ7000億円の米国債を処分した理由は、介入と欧州銀の信用問題でドルのファンディング・コストが急上昇したためだろう」と在京外銀トレーダーは指摘する。為替直先から計算されるオーバーナイトのドルのファンディング・コストは一時180ベーシスポイント台まで急激に拡大した。   

 日本の国際収支では、1―6月の経常収支黒字が5.5兆円だったのに対し、資本収支は2.6兆円の赤字にとどまった。経常収支黒字がもたらす円高圧力を民間の対外投資(資本収支)で十分にオフセット出来ない構造が続いている。

 そこで、公的チャンネルを通じて、黒字を海外に押し出す「為替介入の出番」ということになったが、今回の介入の一時的な円高修正幅は2円程度。介入日以前の為替レートよりも円安水準にできた日数は4営業日足らずだったうえ、資本の日本回帰を助長している面もある。 

 (ロイターニュース 森佳子 編集:伊賀大記)
引用終了