出口見えない米債務協議、米金融市場は8月の嵐に身構え(REUTERSから引用)

現状認識としてわかりやすくまとまった記事だ。暑い夏になりそうだ。

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[ニューヨーク 25日 ロイター] 「Gradually, then suddenly(徐々に、そして突然に)」──。米国がデフォルト(債務不履行)回避に向けた債務上限引き上げを8月2日までに実現できなかった場合、投資家の反応は、人がどのようにして無一文になるか、を表現した文豪ヘミングウェイのこの言葉に要約できるだろう。
 米債務上限引き上げをめぐる大詰めの調整が続く中、週明け25日の米国市場では、株、国債、ドルが揃って売られるトリプル安となったが、一部で懸念されていたパニック的な状況にはならなかった。
 しかし、来週月曜日、8月2日の期限を翌日に控えた1日前の段階で、オバマ政権および与党民主党と野党共和党との合意がなお程遠い状態であれば、デフォルトと格付け引き下げが現実味を増し、市場は急激な反応を示す、とアナリストや投資家は予想する。
 ただ、共和党が債務上限引き上げの条件としている長期的な赤字削減計画をめぐる溝が深いにもかかわらず、合意がまとまると予想する向きは多い。
 リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズのリチャード・バーンスタイン最高経営責任者(CEO)は、市場はワシントンが妥協をあきらたと確認するまで大きくは動かないだろうと予想する。
 同CEOによれば、2008年のリーマン破たんを受けた金融機関救済策成立までの過程では、事態が混とんとしている中で、市場は疑念や懸念を抱きながらも、相場の下げはある程度の歯止めがきいていたという。そして、「不良資産救済プログラム(TARP)」と呼ばれる7000億ドルの救済策が議会で否決された時、世界各国の市場は急落した。
 米国がデフォルトし、格付け会社がトリプルA格付けを引き下げた場合、2008年の時のような市場の混乱が再び起こることを投資家は懸念しているが、カンバーランド・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ピーター・デミラリ氏は「衝撃が走る可能性がある。ただ、それが起こるのは8月2日か3日だと思う」と述べた。協議の完全決裂が宣言されない限り、それより前に市場が急落することはないとみている。
一部アナリストによると、米市場では8月2日が動かし難い期限ではないとの見方もある。バークレイズ・キャピタルは顧客向けリポートで、7月14日以降、予想を上回る税収があったことを挙げて「債務を履行する資金が尽きるのは8月10日あたり」という見方を示した。
 ただ、そうだとしても、短い延命期間でしかない。8月半ばまでに256億ドルもの四半期利払いが予定されている。
 バンク・オブ・アメリカ金利ストラテジスト、プリヤ・ミスラ氏は「8月15日に大規模な利払いが予定されている。その日こそが注目」と指摘。「利払いが履行されなかった場合、不履行となった国債の銘柄が判明する。当該銘柄の価格はその日、大きく変動する」という。
 MFグローバルのシニア株式アナリスト、ニック・カリバス氏は、ストレスの兆候として、8月初めに償還を迎えるTビル(財務省短期証券)の金利に注目している。
 7月25日に実施された3カ月物と6カ月物Tビル入札の落札金利は前回から上昇した。カリバス氏は、今週実施される2年債、5年債、7年債の各入札についても外国投資家の落札比率に注目しており「プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)の落札額がこれまでより増えたら、不安材料」と述べた。

 <打撃は債券よりも株>
 債務上限引き上げ問題で合意が成立しなかった場合、最も大きな打撃を受けるのは債券でないかもしれない。スタンダード・チャータードのリポートによると、債務上限が引き上げられず政府機関閉鎖に追い込まれた1995年、景気への懸念から株が下落し、米債利回りは低下した。ただし、当時は、米国の完全デフォルトを深刻に懸念するムードはなかった。
 ドワイト・アセット・マネジメントのジェーン・キャロン氏は、「長期債ポジションを手仕舞い、現金を確保したい人々はすでにそうしており、今はそういう取引を志向していない」と指摘。そのうえで、「個人的に注目しているのは株式市場。株の投資家の方が混乱しやすいと思う」と述べ、株式市場から引き揚げた資金は短期国債に向かうとの見通しを示した。
 為替ストラテジストは、ドル相場について、8月2日までに合意がまとまらないことが確実になるまで、持ちこたえるとみている。
 BMOキャピタル・マーケッツのトレーディング責任者、フィラス・アスカリ氏は、デフォルトや格下げとなれば、ドルは対スイスフランなどで下落するが、対ユーロでは、欧州債務問題を背景に底堅さをみせると予想した。

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