『アメリカとともに沈みゆく自由世界』カレル・ヴァン・ウォルフレン著 徳間書店

来年こそは、日米同盟を堅持しつつも、独立国としての日本を期待したい。日本の富裕層、支配層は、小沢一郎の意見を真摯に受け止めるべきだ。小沢一郎がいなければ、代わりに同じ役目を果たす人間が必然的に出てくる。

アメリカとともに沈みゆく自由世界』カレル・ヴァン・ウォルフレン著 徳間書店
288ページから抜粋引用
すなわち通常の意味での政府というものを日本は有していないのである。つまり日本社会に分散する権力を調整することのできる、政治的な責任所在の中枢としての政府が、日本には存在しないのである。日本にあるのは管轄する領域によってコントロールの度合いの異なる、省庁からなる行政的中枢である。だがそれは権力や、権威、政策にかかわる真に重要な決定を行う能力や命令権を持った実態ではない。要するに重大な政策決定を行うことはできないのである。民主党のリーダーたちには、こうした弱点を是正しなければならないことがわかっていた。だからこそ彼らは内閣中心政府を確立することが重要であると強く主張したのだ。そして日本のアメリカに対する姿勢にも、この同じ弱点が大きく影響している。
・・・・・中略・・・・・
日本が貿易大国へと驚異的な成長を遂げることができたのは、アメリカの戦略、外交という傘に守られていたためだ。だが、一番重要な点は、日本が根本的な政治決定能力を有する強力な政府として、他国とわたり合う必要がなかったことだろう。
・・・・・中略・・・・・
彼らはそれ以外の状況を知らない。そのため強大な軍事大国によって自国が守られるという、日米関係の構図をおかしいとは思わないのである。世界史上、いまだかつて日米同盟のような関係は一度として存在したことがない。世界最大の経済大国と第二位の大国が、成人に達してもなおも息子を自宅に住まわせる親のようにかかわり合っているのである。民主党幹部たちはこの点についても明確に理解していた。だからこそ鳩山前首相は、日本は「より対等な」立場を望むと表明したのだ。
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アメリカ政府に対する外交姿勢が間違っていると鳩山を批判する人々は、日米関係においてまともな外交など不可能であるという事実を見過ごしているなぜならアメリカは真の意味で日本が独立国であるなどとは認めていないからだ。相手の主権を認めないような国との間に、外交など成立しない。鳩山政権は、自民党の前任者たちが一度として取り組もうとしなかった戦後の課題に着手しなければならなかった。この問題を理解するには、日本がアメリカに依存する一方、現在にいたるまで政治的舵取りを欠いているという、ふたつの事柄の関連性について認識する必要がある。一九四五年以降、日本の政治システム内に、さまざまな官僚たちの集団を支配するような機関が創設されることはなかった。もし日米関係が決裂するようなことがあれば、日本は直ちにそうした中枢組織を築く必要があった。なぜなら政治責任の所在たる中枢を欠いていては、独立国として国際社会で他国と伍していくことはできないからである。日本の政治以外の世界を知らない人にとって、このことは理解しにくいことかもしれない。民主党の主だった政治家たち、そして当然のことながら小沢一郎には、前述したふたつの要因が相互依存関係にあることがわかっていた、と私は見ている。
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